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臨床研究に関する情報公開

重大な不適合とは

臨床研究法における「重大な不適合」とは

臨床研究の対象者の人権や安全性及び研究の進捗や結果の信頼性に影響を及ぼすもの。
【臨床研究法施行通知(令和4年3月31日医政経研発0331第1号)抜粋】

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針における「重大な不適合」とは

倫理的妥当性及び科学的合理性が損なわれるほどに著しくこの指針から逸脱しているもの。
ただし下記の場合には、研究の内容にかかわらず、不適合の程度が重大であると考えられる。

重大な不適合の公表

臨床研究法における「重大な不適合の公表」とは

実施医療機関の管理者は、当該「重大な不適合」に関する対応の状況等を公表すること。
【臨床研究法施行通知(令和4年3月31日医政経研発0331第1号)抜粋】

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針における「重大な不適合の公表」とは

不適合の程度が重大であるときは、その対応状況・結果を厚生労働大臣(文部科学省の所管する研究機関にあっては文部科学大臣及び厚生労働大臣。経済産業省の所管する研究機関にあっては厚生労働大臣及び経済産業大臣。)に報告し、公表しなければならない。
【指針第6章第11-3(1)抜粋】

当院で発生した「重大な不適合」

当院で発生した「重大な不適合」について以下のとおり公表します。

重大な不適合の報告

研究課題名 鎮静下侵襲的内視鏡処置における鼻内圧呼吸モニターの有用性を検討する無作為化比較試験
不適合の内容 除外基準に抵触
2023年2月16日に研究対象者より参加同意書を取得し、心疾患なしとして登録したが、その直後にNYHA分類Ⅲの心不全症状があり、かつ抗不整脈薬(メキシレチン)内服を要する不整脈患者であることが判明した。プロトコルには、「NYHAクラス3以上の心不全のある患者」「βブロッカーやジゴキシン等の抗不整脈薬によるコントロールを必要とする不整脈患者」が除外基準として記載されている。
発生理由 症例登録票記入の際の自覚症状聴取の不足、及び内服薬チェックミスが原因と考えられる。
対応状況等 重大な不適合と判断されたため、研究を中止した。処置自体は2月17日であり、処置時は呼吸モニターを使用せず通常診療を行ったので、研究対象者への影響は認めなかった。
再発防止策 まずは症例登録の不適合があったことを分担医師にアナウンスし、注意喚起を行う。再度同様の事例が起きた場合には、症例登録票に除外基準に該当する心疾患を具体的に記載する等の変更が必要と考えられる。また、ワークシートを作成してチェックする方法だとミスが少なくなると思われる。
研究課題名 消化管用の内視鏡を用いた術中腸管血流評価の有用性を検討する臨床試験
不適合の内容 除外基準に抵触
2023年4月16日に入院患者に本研究の説明を行い、同意を取得したが、除外基準に大腸ステント留置後が含まれていた。試験実施前に当該研究対象者は大腸ステント挿入後であることに気が付いた。
発生理由 当該研究対象者は他院でステント留置されており、その後当院へ紹介され、試験に組み入れられたが、除外基準項目に大腸ステント挿入後があることを失念していた。
対応状況等 症例登録は行ったが、臨床試験に関しては実施されていないことから、直接当該研究対象者への影響を与える事象は生じていない。
再発防止策 症例登録票については、チェックリストは存在していたが、きちんと運用されていなかったので、今後は各項目のチェックをもれなく行い、正しく運用することとする。
研究課題名 抗VEGF治療効果が充分でない糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体手術を併用した抗VEGF治療の安全性ならびに有効性についての前向き試験
不適合の内容 選択基準に違反
当該研究対象者は2021年11月10日に症例登録して開始し、試験スケジュールに沿って治療・経過観察を行っていた。2022年2月頃から糖尿病黄斑浮腫と同様に黄斑浮腫を生じる傍中心窩毛細血管拡張症の合併がその臨床所見から疑われ、それまでの臨床所見、検査データを確認検討した。その結果、黄斑浮腫の原因が傍中心窩毛細血管拡張症によるものかを確定する特異的な検査はなく、最終的な確定診断は困難であるが、本研究の選択基準(2)「対象眼に糖尿病黄斑浮腫を認める」に違反すると判断した。
発生理由 糖尿病または糖尿病網膜症に合併した傍中心窩毛細血管拡張症と糖尿病黄斑浮腫は毛細血管瘤がその病態の主な原因となっているため鑑別が難しい。また、傍中心窩毛細血管拡張症の治療は糖尿病黄斑浮腫と同様の治療による効果が報告されており、非常に類似している。
対応状況等 2022年3月2日に治療期間visit 12週で試験中止とした。糖尿病または糖尿病網膜症に合併した傍中心窩毛細血管拡張症と糖尿病黄斑浮腫とも治療方法は同様であり、研究対象者への影響はほとんどないと思われるが、その後は研究スケジュール、visit日程には沿わずに継続治療、経過観察を行っている。
再発防止策 糖尿病または糖尿病網膜症に合併した傍中心窩毛細血管拡張症と糖尿病黄斑浮腫の完全な鑑別は難しいとしても、蛍光眼底造影検査などの結果、浮腫や眼底所見のパターンから合併の可能性、疑いについて登録前に把握することは可能であったことから、登録前に造影検査結果などを詳細に評価すべきであり、今後これを徹底する。
研究課題名 大動脈弁狭窄症に対し経カテーテル大動脈弁留置術施行後の患者を対象としたアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬の有効性を検討する無作為化非盲検群間比較試験
不適合の内容 除外基準に抵触
対照群に割り付けられた症例に対して、経過観察中に近医かかりつけから試験治療群の薬剤(エンレスト)の処方が行われた。
発生理由 近医かかりつけへの併用禁止薬に関する情報共有が不十分であった。
対応状況等 発生日時:2023年4月4日、発生場所:近医クリニック
研究対象者への影響:特になし
2023年6月20日に試験中止
再発防止策 近医かかりつけへの併用禁止薬に関する情報共有が不十分であったため、連絡の徹底を行い、再発防止に努める。
研究課題名 人工股関節全置換術における表面酸化処理ジルコニウム合金
(OXINIUM)の耐摩耗性に関する多施設共同研究
不適合の内容 同意書原本の紛失
2021年12月24日に実施されたモニタリングにおいて、20例の同意文書 原本の保管が確認できなかったと報告された。
発生理由 同意取得後の2014年に外来棟及び2021年に研究室の引越しが実施され たことにより、同意文書の保管場所が変更されたためと考えられた。
対応状況等 モニタリング報告後に実施した研究担当者による再点検によって、実 際は20例のうち15例の同意文書が臨床試験部で、1例については当該 診療科において保管されていたことが確認された。したがって、結果 的に同意文書が確認できなかった症例は4例であった。何れの症例に ついても同意は取得しているが、同意書原本を紛失したものである。 しかし、その旨が研究代表医師へ報告されたのはデータベースの固定 後(2022年1月13日)であったことから、20例全例が解析対象集団か ら除外された。なお、同意書原本が保管されていなかった4例につい ては、改めて文書による同意が取得された(2022年4月20日~5月11 日)。
再発防止策 当院が主導する試験については、データセンターでRisk Based Approach (RBA) に基づく品質管理活動をしており、同意文書の確認 を実施している。今後は外部の機関が主体となって実施する研究につ いてもRBAに基づく品質管理活動を行うことを求めていくことを検討 している。
研究課題名 化学療法誘発性末梢神経障害に関する多施設共同前向き登録研究および介入 研究
不適合の内容 同意説明文書中の調査項目記載漏れ
第1.0~第5.0版の介入研究用同意説明文書において、中止・完了時の調 査項目 PGIC(全般改善度)の記載が漏れていた。
発生理由 登録研究用の同意説明文書を起案後、それを基に介入研究用の同意説 明文書を起案した。PGICは介入研究固有の調査項目であるため記載 漏れし、研究計画書との整合性確認も不十分であった。
対応状況等 PGICはアンケート形式の非侵襲的な調査項目であり、研究対象者の 同意意思に影響を与えるものではないと考えられるが、実施について 同意を得ていない状況であった。当院において該当する6名の研究対 象者のうち、研究継続中の1名に対しては、当該不備を修正した第6.0 版の同意説明文書を用いて2022年8月2日に再同意を取得した。
再発防止策 同意説明文書の改訂作業にあたり、全般的な研究計画書との整合性確 認をその都度実施する。
研究課題名 化学療法誘発性末梢神経障害に関する多施設共同前向き登録研究および介入 研究
不適合の内容 不適切な版を用いた同意説明・同意取得
第4.0版の同意説明文書を用いて同意取得を行うべきところ、誤って第3.0版を用いて行った(発生日:2022年2月17日及び3月16日)。
発生理由 臨床研究倫理審査委員会の承認に基づき、モニターから第4.0版の同 意説明文書が提供されていたが、担当医師が第3.0版の速やかな廃棄又 は返却を行っていなかった。
対応状況等 同意説明文書第3.0版から第4.0版への変更点は、実施医療機関数の変 更のみであり、研究対象者の同意意思に影響を及ぼさない事項であっ た。モニター間やNews letter内でも情報共有を行い、各実施医療機関 においても同様の事例が発生しないよう注意喚起を行った。同意説明 文書は既に第5.0版への改訂が行われていることから、当該研究対象者 2名には第4.0版の変更点も含めた第6.0版を用いて再同意を取得した (2022年8月16日及び9月6日)。
再発防止策 同意説明文書改訂時にはCRC及び医師全員へのアナウンス配信をタイ ムリーに実施する。旧版の同意説明文書をモニター回収又は施設側で 廃棄し、完了確認を行う。
研究課題名 化学療法誘発性末梢神経障害に関する多施設共同前向き登録研究および介入研究
不適合の内容 選択基準違反
選択基準に「登録時にCIPNによる疼痛(しびれ感を含む)NRSが4以上の患者」との規定があるが、NRSが3の症例が登録されていた。
発生理由 同意取得前に口頭で研究対象者より確認したNRSの値では選択基準を 満たしていたが、文書同意取得後に研究対象者が記載した調査票の NRSの値がそれと異なり、適格性を満たしていないことに気付かず、 登録を行った。
対応状況等 モニターが介入研究の全登録症例を対象に点検を行い、他には適格性 に関わる事例がないことを確認した。本件が判明した時点では、既に すべての観察スケジュールが完了していたため、研究中止の措置は該 当しない。研究対象薬(ミロガバリン)との因果関係が疑われる健康 被害はないことを確認した。当該症例のデータ取扱いについては、症 例検討会等を経て代表医師が決定する。
再発防止策 当該事例については、全研究実施医療機関の医師へ周知を行い、調査 票の内容を正確にEDCへ反映していただくよう、注意喚起を行う。
研究課題名 鎮静下侵襲的内視鏡処置における鼻内圧呼吸モニターの有用性を検討する無作為化比較試験
不適合の内容 データ回収の失敗
データは試験機器使用終了後モニターからUSBメモリで取り出して保管するところ、2022年7月15日に内視鏡センターにてモニターからのデータ回収に失敗し、データを得られなかった。
発生理由 基本的には鎮静医が試験機器の取り外し、データの取り出しを行っている が、研究とは関係ない部分で緊急対応が必要な件が複数発生し鎮静医が対応 した。その間にモニター電源が切られており、データ回収不能であった。
対応状況等 データ回収に失敗したが、バイタルサインや呼吸波形は通常通りに表 示されていたため、研究対象者に対する影響は認めていない。看護記 録も記載されていたため、通常臨床で保存が必要なデータについても 不足なく保存されていた。
再発防止策 十分な人員を配置すること。また、しばらくデータ回収ができない場 合は電源を切らないように張り紙等で書いておき、電源が切られない ようにする。
研究課題名 局所進行膵癌に対するDown staging化学療法としてのゲムシタビン/ナブパク リタキセル(GnP)併用療法の有効性と安全性の検討(CAP-005)第II相試験
不適合の内容 選択基準違反
「主要臓器機能(骨髄、肺、肝、腎など)が保たれており、少なくと も登録前14日以内の臨床検査値が以下の基準を満たす症例」と設定さ れているところ、
・AST・ALTの施設正常値上限の2.5倍以内を逸脱する症例を登録 (2名、2018年12月26日及び2019年12月23日)
・総ビリルビンの基準値を逸脱する症例を登録(1名、2019年4月5日)
発生理由 閉塞性黄疸があってステント挿入後黄疸が順調に改善している途中で あり、臨床経過でcriteriaを満たすと判断されたため、登録を行なっ た。
対応状況等 症例登録後、検査値は改善しており、研究対象者への影響は認めなか った。その後の登録は上記の内容を注意し行った。解析対象集団から は除外となったが、研究全体としての除外症例は最低限にとどめるこ とができたと考える。
再発防止策 閉塞性黄疸改善後に採血し、検査値を確認後登録する。
研究課題名 チオトロピウム/オロダテロール配合剤を服用する慢性閉塞性肺疾患 (COPD)患者における低線量胸部動態X線画像の有用性の検討
不適合の内容 検査項目の不履行
研究対象者7名の胸部動態X線画像立位呼吸停止の撮影が施行されな かった(発生日:2022年9月16日~2023年1月5日)。
発生理由 コニカミノルタ社でデータ解析の結果、上記不適合が判明した。本研 究を始めるまでに、胸部動態X線画像の解析する内容及び必要な撮影 方法、手順の研究責任医師及び放射線部間での確認が不足し、要望す る検査日などの情報共有が不十分であった。
対応状況等 研究対象者への影響はなかったものの、立位深呼吸の撮影のみ施行し たことから、探索的項目の血流解析が欠測値となった。
再発防止策 再発防止に関して以下の項目を徹底する。
・撮影手順に慎重となり、必ず手順書を一読する
・試験開始前の打合せを念入りに行う
・撮影時、撮影条件など指差し確認する
・研究対象者の情報を事前に放射線部で把握できるよう症例ファイル を共有する