Language

診療科・部門

印刷専用ページへ

コロナワクチンセンター

業務体制

写真:猪狩英俊
猪狩 英俊 センター長
(感染症内科教授)

新型コロナウイルス対策の"攻めの一手"として
安全なワクチン接種と研究の推進に取り組む

2020年1月に始まった世界的な新型コロナウイルス感染症の世界的流行への"攻め"の有力対抗策として、ワクチン開発は期待されてきました。人類史上初めてとなるメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンが導入されたことも特徴です。臨床試験でも極めて有効な成績が示されました。新型コロナウイルス感染症の最前線で治療にあたる医療従事者は、優先接種対象者となり、2021年1月以降接種体制を整えるための準備作業が始まりました。
大学病院として、安全なワクチン接種と研究の推進という課題に立ち向かうため、2021年2月にコロナワクチンセンターを当院が全国で初めて設置しました。新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長は病院長)や医学研究院、行政、外部機関と連携をしながら、安全なワクチン接種と研究の推進をしています。センター長は感染制御部の猪狩英俊、副センター長はアレルギー膠原病内科の中島裕史科長が就任しました。

業務・研究内容

ワクチン接種と接種会場の設営

mRNAワクチンの課題として、1)新規のワクチンに対する啓発活動、2)ワクチンの管理と安全な接種、3)接種後の健康管理が挙がってきました。
1)新規のワクチンに対する啓発活動として、感染制御部の谷口俊文准教授による動画を作成しました。できるだけ多くの職員に対して、正しく最新の情報を提供し、ワクチン接種を検討いただく場をつくりました。
2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行しました。新型コロナウイルスワクチン接種は2023年7月に6回目の接種を行っています。しかし、国の負担で接種するのは2024年3月31日をもって終了となりました。コロナワクチンセンターは、ワクチン接種を通して、職員の健康管理、病院の運営と研究、そして千葉大学病院の求められる診療の提供に一定の役割を果たしたと考えています。
2024年1月からは、HPVワクチンのキャッチアップ接種を行っています。
2)ワクチンの管理の中でも、温度管理は極めて重要で、千葉県より-80度のディープフリーザが提供されました。ワクチンを調整してシリンジにセットして、最終的に被接種者に筋肉注射するまでのプロセスを重視しました。薬剤部の渡辺健太薬剤師、感染制御部の千葉均看護師長を中心に動画を作成しました。これらの動画は当院のYouTube公式チャンネルで公開し、全国の医療機関などで活用されました。
3)接種後の健康管理として、会場設営に工夫をしました。特に、接種後にアナフィラキシーを起こすことが心配されたため、15分間(リスクのある方は30分間)の健康観察を行う空間をつくりました。このノウハウは、千葉県が設置する大規模接種会場でも取り入れられました。

また、千葉大学発の医療スタートアップ企業であるsmart119社と連携して、スマホアプリを開発し、ワクチン接種後の副反応について接種後14日間の健康観察を実施することができました。

研究の推進

千葉大学病院は、多くの市民の皆さまから寄付金をいただきましたので、これを研究資金とする研究計画「COVID-19ワクチン接種による免疫学的反応を検討するための検体収集」を策定しました。ワクチン接種に係る免疫応答、効果、副作用等を研究する目的で、血清、末梢血単核球、唾液検体、末梢血白血球より抽出したゲノムDNAを約2000人分(末梢血単核球については1000人分)収集しました。

ワクチンの効果についての研究成果

新型コロナウイルスワクチンの効果については、千葉大学大学院医学研究院アレルギー・臨床免疫学の影山貴弘医師らが論文公表しました。これに先立って2021年6月1日に記者会見を行い、ワクチン接種による抗体価変動と、抗体価に与える影響について公表しました。

  • 写真:研究成果のポイント
  • Kageyama T, et al. Antibody responses to BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine and their predictors among healthcare workers in a tertiary referral hospital in Japan. Clin Microbiol Infect. 2021;27:1861.e1-1861.
  • Kageyama T et al. Immunological features that associate with the strength of antibody responses to BNT162b2 mRNA vaccine against SARS-CoV-2. Vaccine. 2022;40:2129-2133.
  • Mashimo Y, et al. Germline variants of IGHV3-53 / V3-66 are determinants of antibody responses to the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine. J Infect. 2022;85:702-769.
  • Yamazaki S, et al. Adverse effect investigation using application software after vaccination against SARS-CoV-2 for healthcare workers. J Infect Chemother. 2022;28:791-796.
  • Igari H, et al. Antibody responses and SARS-CoV-2 infection after BNT162b2 mRNA booster vaccination among healthcare workers in Japan. J Infect Chemother. 2022;28:1483-1488.
  • Ikeda K, et al. Detecting time-evolving phenotypic components of adverse reactions against BNT162b2 SARS-CoV-2 vaccine via non-negative tensor factorization. iScience. 2022;25:105237.

2021年3月 新型コロナウルスワクチン第1回目・第2回目(3週間後)を開始。
ワクチン接種会場の設営(運営側の人員配置、被接種者の動線と健康観察、掲示物)についても情報発信。これらは、千葉県が設置した大規模接種会場の運営などに活かた。
ワクチン管理(保管、希釈、シリンジ作成など)についての動画配信。
ワクチン接種(筋肉注射)についての動画配信。
同時に新型コロナウイルスワクチンによる効果、免疫応答に係る研究を基盤を整備した。職員より研究参加を希望する方を募集し、血清、末梢血単核球、唾液検体、末梢血白血球より抽出したゲノムDNAを約2000人分収集した(末梢血単核球については1000人分)。
検体を提供した職員に対しては、ワクチン接種前後の抗体価を測定し、報告した。
2021年4月2日 上記検体を使用した研究公募を開始した。(2021年4月19日締め切り) 10研究の公募があり、8研究が採択された。
2021年6月3日 記者会見を行い、ワクチンセンターの活動報告を行った。新型コロナワクチン接種者1774名の抗体価変動に関する研究成果を報告し、ほぼすべての職員で抗体価上昇があったことを報告した。また、抗体価上昇に関する要因別分析について分析した結果も報告した。会場設営に関する情報、ワクチン接種による副反応に関する情報、ワクチン接種に関連する広報活動について伝達した。
2021年12月 新型コロナウイルスワクチン第3回目を開始。
同時に第2回接種からの抗体価の減弱、第3回接種による抗体価上昇を評価するための研究も実施した。
2022年3月14日 第3回接種に関連する抗体価変動を公表。第3回接種までの期間に抗体価は3分の1に減少し、接種によって38倍に上昇した。
2022年8月 新型コロナウイルスワクチン第4回目を開始。
2022年12月 新型コロナウイルスワクチン第5回目を開始。
今回は2価ワクチンBA.4-5対応のもの。
2023年7月 新型コロナウイルスワクチン第6回目を開始。
今回は2価ワクチンBA.1対応のもの。
同時に新型コロナウイルスワクチンの抗体保有調査(N抗体)、抗体価調査(S抗体)を実施した。

スタッフ一覧

氏名 役職・職位 専門分野 認定医・専門医等
写真:猪狩英俊
猪狩 英俊
センター$2ED1、感染症内科教授、病院長補佐 一般感染症、呼吸器感染症、結核・抗酸菌感染症、HIV/AIDS、抗菌薬適性使用、院内感染対策 日本内科学会総合内科専門医
日本感染症学会感染症専門医・指導医・ICD(インフェクションコントロールドクター)
日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医
日本結核・非結核性抗酸菌症学会 専門医・指導医
日本結核・非結核性抗酸菌症学会 ガイドライン作成統括委員長
写真:中島裕史
中島 裕史
副センタ―$2ED1、アレルギー膠原病内科教授、副院長 免疫学、アレルギー疾患、膠原病 日本内科学会総合内科専門医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医・指導医