千葉大学病院 臨床試験部

部長よりご挨拶

「未来への挑戦」

千葉大学 臨床試験部 教授 花岡 英紀
千葉大学 臨床試験部 教授
花岡 英紀

私たちは、患者さんの未来をよくするために挑戦し続ける組織です。日々、千葉大学病院を多くの患者さんが治療のために訪れます。がんを患っている方、難病で日々病気と闘っている方、様々な方がいらっしゃいます。そして、医師、看護師、薬剤師、検査技師など多くの病院スタッフが、チームとして患者の皆さんとともに常に病気と闘っております。私どもも臨床試験を通して患者さんを支えるチームの一員です。

臨床試験とは、医薬品などが社会で広く使用されるための最終段階の研究のステップです。臨床試験は、安全にかつ科学的に実施されなければなりません。そして、そのデータは、公開され薬事承認を経て初めて誰もが使用することのできる医薬品となります。これを実現するために、私たちは、信頼性の高い臨床試験を行うチームの一員として、患者さん、研究者(医師)、病院スタッフ、企業、規制当局とも連携した活動をしております。

例えば、重症川崎病患者さんを対象にしたシクロスポリンの臨床試験(医師主導治験)では、多くの研究者とともに国際的な臨床試験のルールであるGood Clinical Practice (GCP)に基づく試験を計画立案し、全国の患者さんに試験に参加をいただきました。その成果は、企業により厚労省に承認申請され、2020年に新たに誰もが使用できるようになりました。

このような、医師主導治験などを行う臨床研究開発拠点として、千葉大学医学部附属病院は、厚労省の指定する臨床研究中核病院に平成29年に指定されました。医師主導治験を行うための研究機関として、私どもは、アカデミック臨床研究機関(Academic Research Organization:ARO)を組織し研究の包括的な支援をしています。千葉大学のシーズはもちろん、他の大学、医療機関、研究機関、企業の研究の支援を行い、その成果が社会に還元され、患者さんの治療に貢献できるよう、未来をよくするために挑戦していきます。

もう一つ、私たちは、未来への挑戦をしています。それは、すなわち臨床研究に関わる全てのスタッフが成長する組織づくりを行うことです。毎年3−5名の新卒者が入職します。大学病院の中でAROは非常に新しい組織です。このため、特に若手の人材育成が重要です。屋根瓦方式の教育、経験と学習モデルに基づく教育など医学教育で実践している教育を取り入れた独自の教育を行なっています。全てのスタッフが、臨床試験の専門家として多くの試験を通して経験を積み、チームの頼れる一員と成長し、患者さんの未来をよくすることに貢献できると実感できること、これは、個人の成長とともに組織自体の成長にもなります。

千葉大学 臨床試験部 教授 花岡 英紀

一方、私たちが未来へ挑戦しなければならない重要な事項がもう一つあります。それは、研究において不正を起こさないということです。歴史的なことを紐解くまでもなく、研究において、不適切な事案が時として発生します。これらの発生については、原因分析、是正と再発防止が不可欠です。そのための適切なプロセス管理も必要です。臨床研究が複雑化する中、研究に携わる者の意識が重要であり、被験者保護、ベルモント三原則の倫理綱領の遵守を含めた臨床研究の教育を通して常に高い品質の臨床試験を実施していくことが必要です。自動車を作るのに高い品質を消費者は求めます。臨床試験ではそれ以上に高い品質が必要です。品質とは決して偶然ではなく、高い意識、誠実な努力、知的な考え方、そして高度な技術による結果、つまり、多くの賢明な選択の結果と言われています。

臨床試験部は、治験管理・支援センターとして平成12年に発足しました。当時、治験管理・支援センターは、齋藤康センター長(元第二内科教授、元千葉大学長)、丹沢秀樹副センター長(前歯科口腔外科教授)、北田光一副センター長(前薬剤部長)、金澤薫看護師長(元副看護部長)に加えて、専任のスタッフ数名でスタートしました。その後、平成18年に臨床試験部と改組し、平成24年には千葉大学は厚生労働省の指定する全国5カ所の臨床研究品質確保体制整備病院(旧臨床研究中核病院)として指定され、平成29年に医療法上の臨床研究中核病院に指定され、その役割は非常に大きいものとなってきました。

私たちは、新規治療法開発のための医薬品・医療機器・再生医療等製品創造と科学の双翼プロジェクト(Wing of Innovation and Science for the Development of new Medical care;WISDOM project)として、下に示す目標を提唱して活動を行なっております。

WISDOM project

「私たちは、研究者とAROが創造と科学の双翼を担い、新しい治療法の開発を行うために、すべての「英知: WISDOM」の結合を通してプロジェクトを遂行します。臨床研究の成果を社会へ還元することを目的とし、規制に対する十分な知識と連携体制及びglobal AROの一員とした資質を持つAROを整備し、ICH-GCPに基づく臨床試験を実行します。」

未来への挑戦は絶えず続きます。私たちが、ここに掲げる目標に達するためには研究者、規制当局、企業、患者さんなど多くの関係者の協力が不可欠です。つまり、Collaboration/Connection、Harmonization、Alliance and Synergyが重要です。私たちは、皆様方とともに未来への挑戦のために歩んでいきたいと思います。

令和3年 臨床試験部長 花岡英紀

略歴

平成5年
千葉大学卒業 第二内科入局
平成12年
医薬品医療機器審査センター 臨床医学審査官(審査第1部、2部担当、5分野チーム主任)
平成15年
千葉大学医学部附属病院 細胞治療学(アレルギー、膠原病内科)、治験管理・支援センター
平成19年
臨床試験部 副部長
平成20年
臨床試験部長、講師
平成22年
臨床試験部長、講師、診療教授
平成25年
臨床試験部 教授

資格・その他

  • 内科学会認定内科医
  • アレルギー学会認定専門医
  • 日本リウマチ学会所属
  • 日本臨床薬理学会所属
  • 日本臨床薬理学会指導