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アトピー性皮膚炎 予防と治療

アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う皮疹が全身に現れ、皮膚症状は良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴の皮膚疾患です。

アトピー性皮膚炎の発症に重要と考えられているのがアトピー素因です。

アトピー素因とは

  • 1. 家族にアレルギー疾患にかかった人がいる
  • 2. 自身がアトピー性皮膚炎以外の気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎などの既往歴がある
  • 3. IgE抗体を産生しやすい体質

のことです。

こうした背景を持つ方がアトピー性皮膚炎にかかりやすいことはわかっていますが、具体的になぜアトピー性皮膚炎を発症するかはまだほとんど分かっていません。

これまでに明らかになっていることとして、

  • 予防及び治療に肌の保湿が非常に重要であること
  • 乳幼児のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーや気管支喘息など他のアレルギー疾患の引き金となりうること
  • 他のアレルギー疾患や感染症などによって皮膚炎が増悪すること

などがあります。

これまでアトピー性皮膚炎の治療はステロイド軟膏及び保湿剤の使用が主でしたが、昨今ではアトピー性皮膚炎に対する新たな飲み薬の開発やかゆみを抑える注射薬の開発が行われ、少しずつですが実際に使われるようになってきました。

このトピックスではこれまでに明らかになった知見から、最新の治療法や皮膚ケアの方法、増悪させないための注意点などをご紹介していきます。

アトピー性皮膚炎のスキンケア

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿しんが慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気です。
その原因や悪化要因は多種にわたります。そこで治療の基本になるのは薬物療法とスキンケアと悪化要因の除去です。
ここでは、治療の3本柱の1つであるスキンケアについてお話しします。

アトピー性皮膚炎の患者さんのお肌は、バリア機能が低下しており、乾燥しすく、炎症が起こりやすい、またかゆみが起こりやすい状態である。そのため、低下したお肌のバリア機能を正常な状態に近づけてあげることが大切です。
スキンケアの基本は、お肌を清潔に保つための洗浄と、皮膚のうるおいを保つための保湿です。この2つを正しく行い、低下している皮膚のバリア機能をしっかりと保持しましょう。

からだの洗い方

しっかりとした泡を立てましょう
  • 石けんは十分に泡だてましょう。
  • きめの細かい、しっかりとした泡を作りましょう。
  • 「泡立てネット」を利用したり、泡ででてくる「ポンプ式」も便利です
泡を使って手で洗いましょう
  • ナイロンタオルやガーゼはお肌を傷つけるので避けましょう。
  • 手で洗うとお肌の調子も感じることができます。
しわも伸ばして洗いましょう
  • 首や関節部分、足の付け根などのしわも洗い残しがないようにしっかり伸ばして洗いましょう。
  • 顔や目のまわり、湿疹がある部分も洗いましょう。
汚れや泡が残らないように
よく流しましょう
  • 石けんが残っているとお肌に刺激になります。ぬるま湯でしっかり流しましょう。
  • 高温のシャワーや長時間の入浴はかゆみが起きやすいので避けましょう。
洗い方のポイント
  • 石けんは、香料や添加物などが入っていないものを選びましょう。
  • 洗髪はシャンプーで洗いましょう。
  • 体を拭くときは吸湿性のよいタオルで押えるように拭きましょう。

上手な保湿のポイント

入浴後、早めに保湿しましょう
  • 入浴後は体を拭いたらすぐに塗りましょう。
  • 入浴後、しっかりと水分を含んでいる間に保湿しましょう。入浴前に着替えとともに保湿剤を準備しておくといいですね。
たっぷりと皮膚にのせるように
塗りましょう
  • 保湿剤は、たっぷりと塗りましょう。
  • すこしテカっとするくらい塗りましょう。
  • こすらず、やさしく塗り広げましょう。
  • しわをしっかり伸ばして塗りましょう。
楽しく続けましょう
  • 症状が落ち着いてからも保湿を続けましょう。
  • やさしく話しかけながら塗るとリラックスして上手に塗れます。
  • 小さい子は、好きなおもちゃを持たせたりしながら楽しく塗りましょう。

スキンケアは、毎日行う大事な治療の一部ですが毎日続けることは大変です。必要性を理解し、日常生活の中で負担なく行えるよう習慣化して調子が良い時も続けていけるようにしていきましょう。

ステロイド外用薬について

ステロイドって?

ステロイドは人間の副腎という臓器で作られているホルモンの1つです。体の中の炎症や免疫力を抑えたり、糖や電解質の代謝に関わるなどの大切な役割をしています。

ステロイドが発見されたのは今から70年以上も前になります。1948年には薬としてはじめてリウマチの患者さんへ使われました。優れた効果を示したことで、ステロイドの発見・抽出にたずさわった3人の研究者は1950年にノーベル賞を受賞しています。その後、ステロイド薬は飲み薬だけでなく、塗り薬や吸入薬、点眼薬など、幅広い病気の治療薬として使われています。

ステロイド外用薬について

現在、ステロイド外用薬の効果や安全性は多くの研究で示されており、成人や小児を問わず、アトピー性皮膚炎の治療薬として推奨されています。

ステロイド外用薬は皮膚から吸収された場合の作用(血管収縮作用)の強さによって、日本では5段階に分けています。1群が最も強く、5群が最も弱い段階に分類されています。湿疹の重症度や使用する部位などを考慮して薬剤を選択していきます。

使い方については、いつまで?どのくらい塗るの?と疑問や不安をもつ方も多いでしょう。では、湿疹を“火事”に例えてみてみましょう。燃え上がる炎を消すには少ない水ではなかなか消えません。それどころか炎は大きくなるばかりです。これと同じで、皮膚の炎症を十分にしずめるためには必要なランクと十分な量のステロイド外用薬を使用する必要があります。そして、症状が改善したら徐々にお薬を減らしていきます。このように表面上だけでなく皮膚内部の炎症の火種をしっかりとなくすことが大切です。

塗る量の目安


皮膚がしっとりする程度の薬を塗ることが必要です。具体的な目安としては、大人の人差し指の第一関節まで出した薬(チューブ口径は5mm)の量がおよそ0.5gであり、大人の手のひら2枚分の面積に塗ることができると言われています。湿疹の部分に薬がきちんとのるよう、皮膚に均一にのばして塗りましょう、その際軟膏は皮膚にすり込まずたっぷり乗せるように塗りましょう。ステロイド外用薬は必要に応じて、数日~数週間は塗る必要があります。医師の指示に従って、適切な量を塗りましょう。
頭皮などさらに詳しい塗り方については、環境再生保全機構(ERCA)ホームページを参照してください。

出典:環境再生保全機構 ERCA(エルカ)ホームページ

副作用について

ステロイド外用薬の副作用は適切に使えば避けることができます。皮膚が薄くなる、毛細血管が広がる、ニキビができやすくなるなどの部分的な副作用がありますが、そのほとんどは一時的なもので中止により回復してきます。また、ステロイド外用薬は直接皮膚に塗るので、内服のステロイド薬に比べて全身的な副作用は少ないことが知られています。しかし自己判断や誤った知識で治療を行うと副作用が出る・薬が効きにくくなるなど却って皮膚状態を悪化させることがありますので、医師の定期的な診察のもと正しく使用することが大切です。副作用が気になるときは患者さんからも相談してみましょう。

最後に

アトピー性皮膚炎の治療の3本柱は、①原因・悪化因子の除去、②スキンケア、③薬物療法です。この3つをバランスよく行うことが症状のコントロールには大切です。とくに薬物療法において、ステロイド外用薬は柱となるお薬のひとつです。疾患やお薬についての正しい知識をもち、治療に取り組んでいきましょう。