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アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎について

アレルギー性鼻炎とは特定の物質(アレルゲン)に対して免疫反応が起こり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった症状を呈する疾患です。アレルゲンによって大きく2つに分けられ、ダニやハウスダストが原因であると1年中症状があるため通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれており、一方で原因が花粉である場合は一定の季節にだけ症状が引き起こされるため季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)と呼ばれます。

アレルギー性鼻炎に対する治療は

  • 抗原の除去と回避
  • 薬物療法
  • アレルゲン免疫療法
  • 手術療法

が主です。

近年では特にアレルゲン免疫療法としてアレルゲンを少量投与することで、アレルゲンへの反応を抑制する方法の開発が進んでいます。また、基本的なことですがアレルゲンの暴露を防いだり、生活環境へアレルゲンを持ち込まないことはアレルギー症状を抑えるのにとても重要です。

このトピックスではこれまでに明らかになった知見から、最新の治療法や環境整備の方法などをご紹介していきます。

スギ花粉症対策

スギ花粉症ってどんな病気なの?

アレルギー性鼻炎は、スギ花粉やダニ抗原など、特異的アレルゲンとの反応で生じる、くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉を3主徴とする代表的なアレルギー疾患の1つと考えられています。特に、スギ花粉症は下図のように10年で有病率が10%以上増加し、国民の1/4以上が罹患しているとする報告もあります(注)。スギ花粉症は成人に多い疾患と考えられていますが、最近では発症の低年齢化が問題となっており、学童期前に発症する症例も増えています。

(注)参考文献:鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会(2015)
『鼻アレルギー診療ガイドライン -通年性鼻炎と花粉症-(改訂第8版)』ライフ・サイエンス

原因となるアレルゲン、たとえばスギ花粉に一定期間曝露されることで体内にスギ花粉に対するIgE抗体が産生されます。鼻粘膜からアレルゲンが侵入し、ヒスタミン顆粒を内部に蓄えたマスト細胞表面のIgE抗体とスギ花粉が抗原抗体反応を起こすと、ヒスタミンが放出されます。ヒスタミンが神経終末や血管に作用することでくしゃみ、水様性鼻漏、痒みなどの症状を引き起こします。スギ花粉症の時期は、インフルエンザなどの風邪症状と区別が難しい場合があります。いままで検査を受けたことがない方には、血液検査や皮膚テストでスギ花粉に対する抗体を医療機関で確認することをお勧めします。

まずは花粉を避けることが大切!

関東地方ではスギ花粉は2月から4月にかけて飛散します。花粉が飛散する時期にはなるべく花粉を避けるように心がけましょう。日常でできる対策は以下のようなものがあります。

  • 花粉が多い時には外出を避け、メガネやマスクを着用しましょう。
  • 表面がけばだったコートなどの着用は花粉が付きやすいので避けましょう。
  • 帰宅の際は、玄関の外で服や髪をよく払ってから家に入りましょう。
  • 家に入ったら、洗顔やうがいをきちんと行いましょう。
  • 花粉が多いときは、なるべく窓をあけないで、換気は小さく開けて短時間にとどめましょう。
  • 花粉が多いときは、なるべく洗濯物や布団を外に干すのは避けましょう。

症状がでたら、早めのお薬の治療をお勧めします!

例年、強い花粉症症状で困っている方には早めのお薬の治療をお勧めします。花粉飛散開始とともに、または症状が少しでも現れた時点でお薬を開始することが推奨されています。代表的なお薬は、第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬などです。症状の内容や強さによって、お薬を単独で使用する場合や併用する場合があります。お住いの地域、花粉の飛散量、個人の過敏性によって症状が発現する時期や強さは違うので、専門の医師と相談して、皆さんに適した治療を選択しましょう。

舌下免疫療法ってどんな治療なの?

これまで紹介した抗ヒスタミン薬を含めたお薬の治療は、いま困っている症状を一時的に抑えることはできますが、アレルギー性鼻炎を根本的に治療できるものではありません。長期に症状を抑えることができ、抗ヒスタミン薬などのお薬の使用を減らすことが期待できる治療法の一つとして、免疫療法という治療法があります。特に、アレルゲンを舌下に投与する“舌下免疫療法”が2014年からスギ花粉症に対して一般治療として開始され注目されています。スギ花粉症と診断された患者さんが治療を受けることができますが、治療の資格をもった専門の医師の診察が必要になります。舌下免疫療法には以下のような注意点があります。

  • エキスの舌下投与は自宅で行うことができますが、定期的な通院が必要です。
  • 舌下投与は連日行う必要があり、最低3年間継続することが推奨されています。
  • 効果の発現には個人差がありますが、最低3か月程度かかります。
  • この治療が効かない方が1~2割程度存在します。
  • 口腔内の脹れや、痒みなど局所の副作用がでることがあります。
  • 局所の副作用の多くは軽症で治療開始1ヶ月以内に出現することが多いですが、治療を継続していくうちに自然に消失する場合がほとんどです。
  • アナフィラキシーなど重篤な副作用は極めて稀です。

現在、千葉大学医学部附属病院(当院)における治療でスギ花粉症に対して使用できるものには、舌下液と舌下錠があります。舌下液は12歳以上の方が適用となります。舌下錠は12歳未満の小児の方にも使用することができますが、2019年4月までは2週間分しかお薬を処方することができないので、2週間に1回の通院が必要になります。治療開始1ヶ月程度は副作用が出やすく、スギ花粉の飛散時期に治療を開始することはできませんので注意してください。当院で治療を希望される方は、紹介状を持参のうえ受診をお願いします。

花粉症対策にアプリを活用し自己管理を

欧州におけるアレルギー性鼻炎の国際的なガイドラインであるARIA(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)との国際共同研究を行っています。

「MASK-air」という日記のようなスマートフォンアプリケーションを使用し症状を入力することで、本当に治療効果が得られているかどうかを自身で知ることができます。また、データを医師や薬剤師に見せることにより医療側が的確に症状を把握し、治療の向上に役立てることができます。さらに、個人情報を含まないデータを集めて現在の治療の有効性や特徴の解析に用いることで、従来とは違った患者様視点からの治療評価やガイドラインの作成につなげていくことを目的としています。

「MASK-air」アプリ(無料)は、iPhone版とAndroid版がダウンロード可能です。

iPhone版

Android版

詳しくはポスターをご覧ください。

MASK-airポスター
MASK-airポスター(PDF形式、4,200KB)

お問い合わせ

メール: jibisiken@chiba-u.jp

鼻アレルギー診療ガイドラインが改訂されました!

1998年、2008年と行われてきた耳鼻咽喉科医とその家族を対象としたアンケート調査が2019年に行われました。その結果がガイドライン改訂版に掲載されています(下図)。この結果をみると、アレルギー性鼻炎の有病率はこの10年間でも上昇しています。特にスギ花粉症の有病率の上昇が目立っています。また、年齢別にみてもほとんどの年代でスギ花粉症の有病率は増加し、特に、10-50歳代にかけて高い有病率を示しています。あくまで、耳鼻咽喉科医とその家族が対象ですので、全国民の有病率を代表するデータではありませんが、いまだにスギ花粉症が増えていることを示す結果と考えられます。
また、スギ花粉症の治療に関して、これまで重症の喘息や蕁麻疹で使用されてきた抗IgE抗体薬を重症のスギ花粉症にも使用することが出来るようになりました。抗ヒスタミン薬の内服やステロイドの点鼻薬を使用しても症状が改善しない患者さんを対象に使用することができます。スギ花粉飛散期に皮下注射でお薬を投与します。根治を目指すアレルゲン免疫療法とは治療のコンセプトが異なりますが、毎年お薬を使用しても症状に満足できない患者さんは専門医に一度相談してみてください。

アレルギー性鼻炎の有病率
耳鼻咽喉科医とその家族19,859例を対象にアンケート調査(2019年)

鼻アレルギー診療ガイドライン2020年度版(改訂第9版)

年齢別スギ花粉症有病率の変化

鼻アレルギー診療ガイドライン2020年度版(改訂第9版)