千葉大学医学部附属病院 検査部
Division of Laboratory Medicine, Chiba University Hospital
 
検査データについて

基準値(基準範囲・正常値)

 得られた検査結果が、正常なのか、異常なのか、あるいは健康な人の中でどの位に位置するのかを判断するには目安(モノサシ)が必要ですが、このモノサシに相当するのが基準値(基準範囲)です。
 基準値の求め方にはいくつかの方法がありますが、最も多く用いられている方法は、健康な人を多数集めて得られた測定値を統計学的に処理して、その集団の95%の人が含まれる範囲とするものです。この場合、健康な人の大部分は基準値の範囲内に含まれますが、少数とは言え、5%の人はこの範囲を外れることになります。さらに複数項目を同時に測定すると、健常者でも基準値から外れる項目が出現する確率はより高くなり、仮に10項目の測定をした場合に1項目でも基準範囲を外れるケースは、計算上40%にも達します。また健康な人でも、年齢、性別、生活習慣や生活環境など、多くの要因によって変動することがあります。このように基準値から外れることが直ちに異常であるとは言えないことが多く、逆に基準値内にあっても必ずしも正常ではないケースもあります。基準値は正常値とも言われますが、上述のように正常かどうかと必ずしも一致しない場合があるため、現在では正常値と呼ぶことは少なくなっています。
 最終的に正常であるかどうか、治療効果があったかどうかなどの判断は、いろいろな情報から総合的に考える必要がありますので、検査値の高低に一喜一憂せずに主治医の先生の判断に従ってください。

 

病院施設間の検査データの違い

 体重を計測する場合に、使用する体重計によって示される値が異なったものであったならどうでしょうか。体重測定にはいつも同一の体重計を使用しなければならず、その管理はとても面倒なものになってしまいます。ところが、病院で測定される検査の結果においては、A病院で測定した値とB病院で得られた値とが異なることがあります。これはそれぞれの検査室が利用している試薬、標準物質、測定装置などが検査データに影響を及ぼすことに原因がありますが、このようなデータの不一致が生じると、異なる病院を受診する度に同じ検査を繰り返す必要が発生し、患者さんにとっても病院にとっても大きな無駄が生じることになります。
 現在ではこのような不一致を少なくして、全国どこの施設で測定しても同じ結果が得られることを目指して(これを標準化と言います)活動がされており、当院も全国の基幹施設のひとつとして中心的な役割を果たしています。検査データの標準化も徐々に進んでおり、健康診断などで実施される血糖やコレステロールなどの基本的な検査項目では、どの病院で測定してもほぼ一致した値が得られるようになりました。今後もさらなる標準化の推進に向けて努力が続けられています。