千葉大学大学院医学研究院
循環器内科学
千葉大学病院
循環器内科
小野 亮平 (心不全臨床研究)
2025年4月より英国にあるUniversity of Glasgowに留学しており、現在8ヶ月ほど経過しました。自身が学生の頃からずっと憧れていた留学生活を開始しましたが、千葉大学循環器内科及び同門会の先生方に多くのお力添えを頂いたことから、留学記寄稿をさせていただきます。
Glasgow大学
私は学生時代から海外留学に興味があり、千葉大学医学部時代に9回の短期留学を経験しました。その中で、世界の第一線で活躍している医師を目の当たりにし、自分もいつかは長期の海外留学を志したいと胸に誓い、医師になってからの一つの目標としていました。学生時代に千葉大学の循環器内科で研究にも従事させて頂いたこと、また医学部6年次にポルトガルのLisbon大学へ留学した際の教授が循環器医であり、論文執筆も経験させて頂いたことから、志望科は循環器一択でした。
初期研修は湘南鎌倉総合病院で過ごし、非常に忙しい環境でしたが英国の教育専任の常勤医師がおり英語での診察などにも身をおける環境でした。その後医師3年目に入局し、松戸市立総合医療センターで後期研修を行い、そこでも環境に恵まれAHAやACCなどの国際学会での発表機会を頂けました。その後医師5年目から9年目は大学病院で勤務を行い大学院も卒業し、多数の論文発表や国際学会を経験させていただきました。
これらの国際学会に参加する中で、自分が医師になってからの10年近くで劇的に進歩があったと肌で感じたのは心不全の薬物治療であり、パラダイムシフトが起きたと言っても過言ではないと思います。サクビトリルバルサルタン(PARADIGM-HF, PARAGON-HF), ダパグリフロジン(DAPA-HF, DELIVER), フィネレノン(FINEARTS-HF)など心不全予後を改善する臨床研究結果が次々と登場しましたが、これらの臨床研究のPIを務めていたのが現在の留学先のJohn McMurray教授です。世界の薬物治療エビデンスを変え続ける環境に身を置いて自身も研究したいと強く感じ、2022年の冬に留学を希望し、留学助成金の取得を条件に受け入れを承諾頂きました。最終的に約2年間留学助成金の取得に時間を要し、ビザの申請も難渋しましたが、留学を開始することができました。
学会の様子
私が所属しているBHF Cardiovascular Research Centreでは、過去に行われた多数の心不全大規模臨床研究データにアクセス可能であり、サブ解析や統合解析を行っています。教授の興味が非常に幅広いことから、様々な側面から心不全や薬物療法について生データから解析することができます。基本は自身で解析を行い、統計家もいるため質問できる環境もあり、横の風通しが非常に良いです。ラボメンバーは多国籍で日本、中国、イラン、デンマークなど多彩です。また短期で来る研究者やPhDの学生などもおり、入れ替わりも多いです。Glasgow大学内には複数の循環器PIがおり、2週間に1回、別のラボメンバーも含めて抄読会や予演会があり、非常に勉強になります。また臨床研究を主導しているPIが多くいるため、トライアルのデザインそのものについて学ぶことができるのは貴重な環境といえます。McMurray教授は多忙な中でも非常に親身に接してくださり、一方で外来診療やCCU当番にも従事しており実臨床に根ざした研究を続けているのを間近に見て、大変尊敬しています。
妻と子供2人(5歳と1歳)を連れて家族で渡英したため当初は不安がありましたが、スコットランドは非常に人が温かく自然も豊かであり、子育て環境としては整っていると感じます。長女はイギリスではPrimary school(日本でいう小学校)に入る年であり、現地校に通い始め、英語を聞いたり話せるようになってきており非常に驚いています。日本人は多くないですが、日本語補習学校がスコットランドに一つあり、そこに通っているため、日本人コミュニティに属して情報も得ることができています。
自分の家から大学までは電車と地下鉄を乗り継いで30分程度ですが、電車が遅れたりストライキのためにキャンセルになることなどもあり、インフラはやはり日本が素晴らしいです。また医療費はビザ申請時に保険料を支払うために無料ですが、General Practitionerへの受診のハードルが非常に高く、通常の熱などでは外来ですぐにみてもらうことはできず、専門医の紹介などの場合には月単位かかるなど医療制度が異なりアクセスは困難です。イギリスは天気が悪いと言いますが、小雨の日が多く1日を通して晴れる日が少ないことに加え、夏は日照時間が長く、冬は短い(例えば12月は8-16時くらいしか日が出ていない)ことが、そのように感じる原因かもしれません。
一方でグラスゴーやエジンバラはイギリスらしい歴史的建造物も多く、ハリーポッターの舞台でもあり街並みは綺麗です。物価は英国全体で高く、さらに円安も進行しているため金銭面は大変ですが、家族と多くの時間を過ごすことができる留学生活に幸せを感じています。ラボへの出勤は融通が効くため、子供達のイベントには毎回参加できますし、長期休暇で欧州近隣諸国へ旅行もできます。すでに国内旅行でロンドンはもちろん、ギリシャやドイツにも家族で訪れ、これはヨーロッパ留学の醍醐味の一つかと思います。
留学に際し、小林教授を始め、医局の先生方や心不全グループのメンバーには沢山のサポートと応援を頂きましたことを感謝いたします。また同門会の先生方には千葉大学循環器内科教室同門会留学助成でご支援を頂き、この場をお借りして御礼申し上げます。留学中にやりたいことはまだまだ沢山ありますので、また別の機会でも報告をさせて頂ければ幸いです。