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千葉大学医学部附属病院
千葉県寄附研究部門
高齢社会医療政策研究部






高齢社会の医療政策を考える

概要


−高齢社会の医療政策を考える研究部門−

高齢社会医療政策研究部は、千葉県から寄附を受けて、平成24年4月に設置された部門です。この部門の活動期間は、平成24-25年度の2年間となっています。

国連の定義では、千葉県を含む首都圏は一つの人口単位であるとみなされています。2011年の人口は3720万人で世界最大の都市です。国連の推計では、2025年の首都圏の人口は3870万人となり、その時点でも依然として世界最大であることには変わりありません。重要なことは、この世界でもっとも大きな人口の塊が急速に高齢化の度合いを増していることにあります。これは人類が未だかつて経験したことがない人口構造の変化なのです。高齢者人口の大幅な増加という現象は、アジアを中心に各国で進行しています。例えば中国の80歳超の人口は、2050年までに1億人に達すると予測されています。

われわれがもっとも関心を寄せているのは、高齢者人口の増加に伴う医療需要の増加に対して、今の医療提供体制が耐えられるのか否かということです。例えば千葉市で近い将来、現在の1.6倍の入院数、2.0倍の死亡者数になるという試算があります。医療従事者、施設、設備あるいは医療費といった要素を見てみても、現在の延長線上には解がないことは自明です。状況を綿密・正確に分析し、医療システムに必要なパラダイムシフトを構想し、実際的な解決策を提言するシンクタンクが求められていました。そこで千葉県の支援を受けて設置されたのが高齢社会医療政策研究部です。

高齢社会医療政策研究部では、2年間の活動期間に次のような研究を行う予定です。


1 千葉県における高齢社会の現状、今後の人口推移と医療需要、及びこれに必要な医療資源の算出
2 今までに提唱された高齢社会の医療計画、グランドデザインの収集、検証
3 千葉県内の健康教育や啓発事業との連携
4 上記を踏まえた上で、具体的な医療政策の提言

これまでにも千葉大学医学部附属病院では企画情報部、地域医療連携部などが高齢社会の諸問題を手がけてきました。本年度には認知症疾患医療センター、先進加齢医学寄附講座が設置され、高齢化への組織的対応が充実してきました。高齢社会医療政策研究部はこれらの部門と連携し、さらに医学部、看護学部、薬学部、その他千葉大学各学部、および行政機関、医師会などの団体とも連絡を密にとり、千葉県の高齢社会の医療政策を考えます。

本年2012年の世界保健デーではくしくも高齢社会が取り上げられ、テーマは「Good health adds life to years(健康であってこその人生)」でした。具体的なアクションとして、@生涯にわたる健康の促進、A高齢者の健康と社会参加を促進するような高齢者にやさしい環境の醸成、Bプライマリー・ヘルスケア、長期介護、緩和ケアへのアクセスの確保、C高齢者を尊重し、家庭および地域生活を支援すること、が掲げられています。高齢者にとって医療や介護は生活を支える基本的な機能ですが、ここでは高齢者が社会で生み出すポテンシャルにも注目した上で、生活を多面的に支援するという視座が提示されています。 

首都圏で進行中の高齢化はこれまでになかった人口構造の変化であり、千葉県で高齢社会の医療政策を熟慮することは、首都圏や日本のみならず、世界の未来を考える上で非常に重要であることに疑いはありません。しかし、医療や年金に限らず、高齢者雇用、高齢者の家庭内労働、地域社会との関わり、住宅や交通など、高齢社会で考えるべきことは数多くあります。当部の活動が発展し、より総合的に高齢社会の研究が進められることが期待されています。


【参考】
United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division: World Urbanization Prospects, the 2011 Revision: Highlights. New York, 2012 http://esa.un.org/unpd/wup/pdf/WUP2011_Highlights.pdf
National Institutes of Health and World Health Organization,  Global Health and  Aging. October 2011. http://www.who.int/ageing/publications/global_health.pdf
厚生労働省, 2012年世界保健デーについて http://www.mhlw.go.jp/bunya/kokusaigyomu/sekaihoken_day_h24.html
World Health Organization, World Health Day http://www.who.int/world-health-day/2012/en/index.html



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