千葉大学小児外科
研究内容 |
小児悪性腫瘍 |
- 神経芽腫の発癌過程には神経堤細胞の発生と分化を制御している種々の遺伝子や成長因子の異常が深く関わっている。これまでに神経組織で特異的に転写されるc-srcN2の発現量、神経前駆細胞の発生・分化の制御に関与するアダプター分子であるShc familyの発現量が神経芽腫の予後と関連していることを明らかとしてきた。
- 神経芽腫は、DNAおよびRNA診断による予後因子を組み合わせることにより患児の予後がかなり正確に予見できるようになってきた。そこでわれわれは、単に救命のみならず、より副作用、後遺障害の少ない治療を目指して検討を行っている。すなわち、予後のよい腫瘍に対しては、必要最小限の治療を選択して患児の負担を少なくし、難治例に対しては、強力な化学療法と適切な外科治療を含む集学的治療を組み合わせることで予後の改善をはかっている。
- 難治性の神経芽腫に対する新たな治療法としてサイトカイン遺伝子導入による免疫遺伝子治療、Sindbis
virus感染による腫瘍融解ウイルス療法の有効性について研究を行っている。
- 肝芽腫においては、日本小児肝癌スタディグループの統括施設であり、「小児肝癌の治療確立をめざした生物学的予後因子の研究」の共同研究を行っている
- 神経芽腫、腎芽腫、横紋筋肉腫についても各スタディグループに加わり、共同研究を行っている。
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消化管機能 |
- ヒルシュスプルング病はNeurocristopathyという概念でとらえられ、その病因として神経堤細胞の移動・分化・増殖に関与する遺伝子異常が考えられている。当教室では、Hox 11 familyであるNcx遺伝子の標的遺伝子の同定、機能解析を行うことでNeurocristopathyの原因検索を進めている。
- 直腸肛門奇形(鎖肛)は新生児外科において頻度の高い疾患であるが、原因は未だ不明である。当教室では、直腸肛門奇形モデルマウス(レチノイン酸投与マウス、Danforth'
short tail マウス)を用いて肛門形成に重要な発現シグナルを発生学的な側面から研究している。
- 直腸肛門奇形の治療において、筋電図、MRI検査、直腸肛門内圧検査などを駆使し、より良好な排便機能を獲得するための研究を行っている。
- 腸管は、生体免疫において大きな役割を果たしていることが明らかとなってきた。当教室ではbacterial translocation、炎症性腸疾患における消化管粘膜の役割についてパイエル板を中心とするToll-like receptor、サイトカインとの関連性を研究している。
- 胃食道逆流症に対し、原因検索、重症度判定、手術適応の決定を行うにあたり、 食道pH・造影検査・内視鏡検査を併用した検討を行っている。
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肝胆道疾患 |
- 胆道閉鎖症の病因の一つとしてウイルス感染があげられている。当教室では、reovirus
RNA検出系を作成し、肝胆道組織と便を用いて胆道閉鎖症への関与を検討している。
- 小児肝胆道疾患の診断におけるERCP, MRCPの有用性を検討している。
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代謝・栄養 |
- 幼若ラットに中心静脈栄養を行い、中心静脈栄養法の致命的合併症である肝障害の予防
法の一つとして、間歇的投与の有用性を明らかとした。
- 上記間歇的投与の有用性を臨床応用し、短腸症候群、慢性仮性腸閉塞症例に長期在宅中心静脈栄養を施行している。患児のQOL、成長・発達について検討を行っている。
- 出血ショックマウス、担癌マウスを用いて、ω3系脂肪酸のエイコサノイド代謝に及ぼす影響ならびに免疫賦活作用を明らかとした。
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新生児外科疾患 |
- 先天性横隔膜へルニアは、新生児外科疾患の中で唯一治療成績の向上が認められない疾患である。当教室では妊娠ラットにnitrofenを投与して横隔膜へルニアモデルを作成し、摘出した胎児肺を用いて血管増殖因子の発現と肺高血圧症との関連について研究を行っている。
- 先天性横隔膜へルニア治療法の選択において動脈管ドプラ血流パターンの変化を捉えることの重要性を明らかとした。
- 先天性横隔膜へルニア重症例に一酸化窒素、ECMOを導入し、適応、問題点などについて検討を行っている。
- 出生前診断症例の出産時期、出産方法、出生後の治療法などについて産科と共同で検討会を開催し、治療方針を検討している。
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泌尿器疾患 |
- 出生前診断された嚢胞性腎疾患の治療方針について検討を行っている。
- 非触知性停留精巣症例におけるMRI,MRA検査の有用性についての検討を行っている。
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小児内視鏡外科 |
- 腹腔鏡・胸腔鏡手術は、成人外科領域では普及しているが、小児外科領域では症例の特殊性からその実施は限られている。小児に対する適応、安全性、合併症対策などについて検討を行っている。
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