コラム

労使間でトラブルが発生したときはどこに相談するの?

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労働紛争には、労働組合が関わる集団紛争と、個々の労働者と使用者の個別紛争があります。集団紛争は労働組合法や労働関係調整法に解決方法が定められています。

個別紛争の解決は、労働基準法の違反があれば,労働基準監督署へ申告をして労働基準監督官によって処理されますが、労働基準監督署の権限行使の対象とならない退職の強要、労働条件の不利益変更の問題や、解雇理由をめぐる紛争は、労働基準監督署による解決は困難です。本来であれば、民事紛争として、裁判(訴訟)によって解決されるものですが、決着までは多額の費用と時間がかかります。

そこで、平成13年にこれらの個別紛争の処理を目的に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」(個別労働関係紛争解決促進法)が制定されました。個別労働関係紛争解決促進法は、紛争解決のために、まずは当事者に自主的解決を求め、そのために都道府県労働局長による必要な情報の提供・相談等の援助を用意しています。また、都道府県労働局長は、当事者の双方又は一方から紛争解決のための援助を求められた場合は、必要な助言・指導を行い、さらに、当事者の双方又は一方からあっせんの申請に基づいて、都道府県労働局に置かれた紛争調整委員会にあっせんを行わせることができます。

なお、男女雇用機会均等法・パートタイム労働法・育児介護休業法のもとでの個別的労働紛争についても、個別労働関係紛争解決促進法の手続とは別個の解決手続が用意されていますが、紛争解決手続の流れは個別労働関係紛争解決促進法と同様です。いずれの紛争解決手続も「自主的解決」を基本にしながら、都道府県労働局長の「助言・指導・勧告」、及び都道府県紛争調整委員会による「調停」が用意されています。

これらのサービスは無料で行っており、各都道府県労働局、或いは各労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーが窓口になっております。総合労働相談コーナーでは労働問題に関するあらゆる分野が対象になっており、情報提供・個別相談のワンストップ・サービスを行っています。法違反に関しては、労働基準監督署、公共職業安定所、雇用環境・均等部(室)への取次ぎを行い、都道府県(労政主管事務所、労働委員会など)、裁判所、法テラス(日本司法支援センター)、労使団体における相談窓口などとの連携も行っています。

また、個別労働紛争の解決制度として、新しい労働審判手続が労働審判法によって導入され、平成18 年4 月1日よりスタートしました。これは、個別労働関係紛争解決促進法の用意した都道府県労働局の相談、助言・指導、あっせん制度では解決しにくい紛争に対して、民事訴訟手続と連携して裁判所での簡易・迅速な紛争解決を目的としています。

その他に個別労働関係紛争解決機関として、労働委員会、労政主管事務所、社会保険労務士会、弁護士会等もございます。

都道府県労働局長の「助言・指導」、「あっせん」、「調停」には強制力はなく、労働審判の結果に異議申し立てをすれば、最終的には訴訟へ移行することになります。使用者と労働者という継続的な人間関係を前提とした円満な解決のためには、裁判によらずに、自主的な解決が図られることが重要との考えから、もし、賃金不払い、解雇、パワハラ、その他労働関係に関する労使間のトラブルが発生した場合、まずは、都道府県労働局或いは労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーへの相談をお勧めします。

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