コラム

生活の原資となる賃金は重要な労働条件です

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賃金とは

労働基準法では、賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものを言います。賃金の額や支払方法は、労働契約や就業規則、またはその一部である賃金規定に基づいて決められます。しかし、賃金の形態や名称は各事業場によってさまざまですので、何が賃金で何がそうでないかを判断するのは、難しい問題です。通常、賃金かそうでないかを判断するポイントは「使用者が支払うものであること」「労働の対償であること」になります。特に気になるのが賞与(ボーナス)や退職金は賃金かどうかではないでしょうか。 賞与(ボーナス)や退職金は必ず支払わなければならないという法律上の規定はありませんが、就業規則等で支給基準が明らかにされており、使用者に支給義務がある場合、賞与(ボーナス)や退職金も賃金に当たり、労働基準法による保護の対象となるとされています。これに対し、使用者が道義的な観点から任意に労働者に支払う見舞金のように任意的恩恵的に支払うものは賃金に当たりませんし、出張経費の精算や福利厚生目的の支給も賃金ではありません。さらに、顧客が労働者に直接支払うチップも使用者による支払いではないので、賃金に当たりません。

賃金の支払い方

つぎに、賃金の支払い方のルールを見て行きましょう。労働者は、働いて得た賃金によって自分や家族の生活を支えています。ですから、賃金は労働条件の中でも最も重要なものであると言え、使用者から労働者へ賃金の支払いが確実になされなければなりません。そのため、労働基準法では賃金の支払い方について、以下の5つの原則を規定しています。 ① 通貨払いの原則→賃金は通貨(強制通用力のある貨幣)で支払わなければなりません。
② 直接払いの原則→賃金は直接労働者に支払わなければなりません。
③ 全額払いの原則→賃金は全額支払わなければなりません。
④ 毎月払いの原則→賃金は毎月1回以上支払わなければなりません
⑤ 一定期日払いの原則→賃金は一定の期日を定めて支払わなければなりません。

しかし、それぞれの原則には例外があり、代表的な例外といえば、通貨払いの原則の例外として、労働者の同意を得た場合の口座振込みがあり、全額払いの原則の例外には税金、社会保険料等の控除、労使協定(労働基準監督署への届出必要なし)がある場合の購買代金、社宅費等の控除があります。 その他、労働基準法には、解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇の賃金、災害補償、減給の制裁の限度額、それぞれの基礎となる平均賃金の規定、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対しての割増賃金の規定等もあります。また、使用者が最低限守らなければならない賃金の基準については、最低賃金法という法律で定められています。

労働債権の保護

最後に賃金(労働債権)の保護について見て行きます。会社の経営が悪化して、賃金の支払いが遅れたり、全く支払われなくなる場合があります。また、会社が倒産することもあります。そのような場合に、会社に対して、労働者が賃金や退職金を請求できる権利を労働債権(賃金債権)といいます。労働債権については、法律で一定の保護がされています。例えば民法では、労働債権については、会社の財産から、他の債権者より優先して弁済を受ける権利が認められています。この権利を先取特権と言います。また、会社が倒産した場合の労働債権の取扱いは、倒産手続の種類により、それぞれの法律によって優先的取扱いを受けることができますが、すでに会社の財産が何もないという状況では、賃金の確保が困難になります。そこで、賃金の支払の確保等に関する法律では未払賃金立替払制度を定めています。 この制度は会社が倒産したために、賃金が支払われないまま退職をした労働者に対して、その未払賃金の一定範囲について国(独立行政法人労働者健康安全機構へ委託)が事業主に代わって立替払いをする制度です。立て替えられる範囲は原則、未払いとなっている賃金の総額の80%の額が労働者へ支払われますが、立替払いの対象となる倒産等、いろいろと他にも条件がありますので、詳しくは最寄りの労働局あるいは、労働基準監督署にご確認ください。やはり賃金は労働者にとって生活の原資となる重要なものなので、労働基準法や他の法律でしっかりと保護されているという訳です。

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