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【連載】麻木久仁子さんインタビュー vol.1

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病気とともに日常を生きる
麻木久仁子さんが語る、これからの「健康」のかたち

 

11月30日に開催された第10回県民公開講座「心臓と脳―未来の健康を守るヒント―」では、スペシャルゲストとしてタレントの麻木久仁子さんが登壇。48歳で脳梗塞を経験し、その後、乳がんの治療とも向き合ってきた麻木さん。自身の体に起きた変化をきっかけに、健康との距離感や生き方に対する考え方は少しずつ変わっていったといいます。発症当時の状況やその後の検査、生活習慣を見直すきっかけとなった出来事について、率直な思いを語っていただきました(全3回①)。

 

麻木久仁子(あさぎ・くにこ)

1962年11月12日、東京都生まれ、学習院大学法学部中退。知性派タレントとしてクイズバラエティ番組を中心に出演する他、司会、コメンテーターとしても活躍。2010年に脳梗塞、2012年に初期の乳がんが見つかったことから、検診の大切さや自身の体験を、講演会や情報番組などで伝えている。

 

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右半身のしびれが知らせた異変
麻木久仁子さんが語る、脳梗塞発症の瞬間

最初の異変は突然でした。家で家事をしているときに、右半身に痺れが走ったんです。数十秒続いた後に消えて、しばらくするとまた痺れる。ずっと続くわけではなく、痛みもなかったことから当時の私はそれを「深刻な異変」だとは受け止めませんでした。

 

高血圧でもなく、脂質異常を指摘されたこともない。動脈硬化や糖尿病とも無縁でした。だから「脳の病気」という発想がまったく浮かばなかったんです。仕事が忙しかったこともあり、「落ち着いたら病院に行こう」ぐらいに考え、ようやく受診したのは4日後。MRIで検査した結果、「非常に小さいですが、脳梗塞があります」と告げられました。当時48歳。脳梗塞としては若年性にあたる年齢です。

 

そこから原因を探る検査が始まりました。脳神経内科の先生を中心に循環器内科、心臓の先生まで加わり、さまざまな可能性を探ったものの、最終的に下された診断は「原因不明」。医学の世界では珍しいことではないと分かっていても、自分の身に起きると、その言葉はどこか掴みどころのない、不思議な感触として残りました。

 

ただ、生活を振り返ってみれば、思い当たることがなかったわけではありません。当時は仕事が非常に忙しく、睡眠も食事も不規則。ストレスも高い状態が続いていて、お酒とタバコも日常の一部になっていました。明確な病気はなくても、水分不足や睡眠不足、強いストレスなど、いくつもの要因が重なった結果、体のバランスが崩れ、小さな血栓ができたのではないか──私はそんなふうに受け止めています。

 

幸い、脳梗塞は本当に小さなもので、痺れも薬の服用によって徐々に治まっていきました。再発を防ぐため、バイアスピリンを3年ほど服用。同時に生活習慣を見直すよう指導されました。規則正しい生活と水分補給、そして禁煙。タバコはこの出来事を機に禁煙外来に通い、すっぱりやめました。

 

この出来事は、その後の行動も変えました。「今度こそきちんと」と心を入れ替えて人間ドックを受けるようになり、その検査で乳がんが見つかりました。50歳に入る少し手前で軽症とはいえ脳梗塞を経験し、生活を見直す意識を持てたことは、今振り返れば不幸中の幸いだったのかもしれません。

 

私の若い頃は、体調より仕事を優先するのが当たり前という時代。とくに芸能の世界では、多少の熱があっても舞台に立つのが美徳とされ、お酒を飲みながら「胃が痛い」と言うのがどこか武勇伝のように語られる。そんな昭和の空気が、まだ色濃く残っていた世代です。でも、今はもうそんな時代ではありません。無理をしないこと、休むことの大切さが、ようやく社会全体で共有されるように。それはとても良い変化だと思います。一方で、若い時代にがむしゃらに頑張る時期が人生に必要なのも事実。バランスを取るのは容易ではありません。

 

健康というものは、つくづく不公平だと感じます。生活に気をつけていても病気になる人はなるし、暴飲暴食でも90歳まで元気な人もいる。努力と結果が必ずしも比例しない世界です。だから私は、「若い頃から完璧に健康であるべきだ」とまでは言い切れないと思っています。無理のない範囲で気をつける。そのくらいの距離感が、ちょうどいいのではないでしょうか。

 

個人が無理をしすぎないよう、社会の仕組みが少しずつ整えられてきたことも、大きな変化です。ワークライフバランスや健康寿命という言葉が広まってきた背景には、「人は頑張りすぎてしまうものだ」という前提があります。そうした時代の方向性を、私はとても良いものだと感じています。


 

vol.2につづく

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