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アレルギーに関するTopics

小児気管支喘息の治療・管理ガイドラインが改訂されました

気管支喘息は、空気の通り道が慢性的に炎症を起こすこと(慢性の気道炎症)により様々な刺激に過剰に敏感(気道過敏性亢進)になり、発作的に気道が狭くなるため、息苦しくなったり咳が止まらなくなったり、ゼーゼーしたりする症状を繰り返す疾患です。小学生では約10人に1人が喘息を患っているという報告もあり(2015年の全国調査)、とても身近な病気の一つです。治療や日常管理は、日本小児アレルギー学会が作成する「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」を参考に行われていますが、2020年にこのガイドラインが改訂されたことから、今回、ガイドラインのトピックなどを少し記載したいと思います。

喘息は慢性の気道炎症を特徴としていますが、病態について理解が進んで来ました。簡単に説明すると、アレルゲン・大気汚染物質・タバコの煙などの環境要因に加え、遺伝的要因(いわゆるアレルギー体質)を背景とし、多くの免疫細胞や免疫物質(サイトカインやIgE抗体など)が関与しており、それらが相互に関連しあって小児での慢性気道炎症(2型気道炎症)を引き起こしていると考えられています(図1)。

図1 小児喘息での慢性気道炎症

治療目標としては、無症状な状態を維持することに加えて、呼吸機能や気道過敏性を正常化するとともにQOLの改善(スポーツを含めて日常生活を普通に過ごすことができる。治療薬による副作用がない)を図ることです。この目標を達成するために、喘息の治療・長期管理においては、吸入ステロイド薬などの薬物療法に加えて、喘息を悪化させる要因への対応(ダニや受動喫煙対策など)、よりよい患者教育やパートナーシップを、「三位一体」として進めることが大切です。さらに、治療開始後も、評価・調整・治療のサイクルを継続していくことも重要です(図2)。

図2 喘息長期管理のサイクル

喘息の長期管理薬(無症状な状態を維持するための薬物療法)としては、慢性気道炎症に対する吸入ステロイド薬が基本治療で、重症度に基づき薬剤の使用量などを調整しています。吸入ステロイド薬などの治療により、近年は、多くの患児でコントロールやQOLは大きく改善しています。その一方、吸入ステロイド薬などの吸入薬や内服薬などの薬物療法ではコントロールが不十分な患児も一定数います。このようなより重症な患児に対しては、最近、図1で記載したような慢性気道炎症に関与する免疫物質(2型炎症に関与するサイトカイン)やアレルギー抗体(IgE抗体)を標的とした生物学的製剤(分子標的治療薬)(表1)が使用できるようになったため、重症患児におけるコントロールも改善がはかれるようになってきています。

最後に。薬物療法、増悪因子への対応、患者教育・パートナーシップの改善によりほとんどの喘息患児で症状のコントロールが図られるようになっています。これら三位一体で治療・対応を進めてもコントロールがつかない患者さんでは、「実は喘息以外に症状の原因がある」場合もあります。コントロール不良な場合は、主治医の先生と再度診断を含めて検討していくことも大切です。

表1 小児気管支喘息に適応のある生物学的製剤

左にスライドさせてご覧ください。

抗IgE抗体
(オマリズマブ)
抗体IL-5抗体
(メポリズマブ)
抗IL-4/IL-13受容体抗体
(デュピルマブ)
対象年齢 6歳以上 6歳以上 12歳以上
投与方法 皮下注射 皮下注射 皮下注射
(在宅自己注射可能)
投与間隔 2または4週間毎
※体重、血清総IgE濃度に
応じて変化
4週間毎 2週間毎
※初回のみ倍量投与

アニサキスアレルギーについて

「お寿司を食べて30分ぐらいたったら突然全身がかゆくなり、腹痛と吐き気が出てトイレに駆け込みました。トイレで息苦しさを感じ、意識がもうろうとして『このままでは死んでしまう!!』と感じ這い出て夫に助けを求めました。」とお話しされたAさん。トイレから息絶え絶えに這い出てきたAさんを発見したご主人は急いで救急車を呼び、Aさんは救急病院に搬送されました。病院到着時は全身真っ赤になり血圧50台とショック状態。ご本人はそのころの記憶はなかったそうです。救急病院での適切な治療により、後遺症なく退院されました。診断はアナフィラキシーショック。同病院の内科で39項目のアレルギー検査を受けたが、その日に食べたエビ、カニ、サバ、サーモンを含め、すべて陰性。原因不明のアレルギーとして、当院アレルギー外来を紹介受診されました。

成人の食物アレルギーでは、多くの場合、血液検査で行う特異的IgE抗体の有無と、症状の発現様式から診断がつきます。しかしAさんのように「アレルギー検査したが原因がわからない」として紹介受診される方は実は多くいらっしゃいます。
View39やMAST36などのセット検査でも網羅しきれていない食材が原因である場合、血液検査は陰性だが実際の食物には反応する場合、逆に様々なものに陽性反応が出てしまい、どれが本当の原因かわからない場合など、さまざまなケースがあります。Aさんの場合、真っ先に疑うべき疾患は、「アニサキスアレルギー」です。

本稿では、「アニサキス症」と「アニサキスアレルギー」の違いやその注意点、対処法等をお伝えしたいと思います。

アニサキス症について

アニサキスはサバやイカなど海の魚介類に寄生する2-3cmの糸状の寄生虫で、普段は魚介類の内臓に寄生していますが、宿主が死ぬなどして環境が悪化した際に筋肉内へ移動します。
このアニサキスを運悪く生きている状態で摂取し、胃や腸の壁に嚙みつかれた際に「アニサキス症」が起こります。鮮魚の刺身や寿司、酢漬けを食べた数時間~数日後に腹痛と嘔気・嘔吐が出現した場合に真っ先に疑うべき疾患です。特に千葉県は海が近く、鮮魚を食べる方が多いので多くの患者さんがいます。胃カメラで虫体を除去すると速やかに症状が治まるため、「先生またなっちゃったので、早いとこ胃カメラで虫を取って下さい」と受診する患者さんもいます。95%以上の症例では胃壁に、3%程度では腸壁に嚙みつきますが、ごくまれに壁を通り抜けて腹腔内や肝臓などに迷入することもあります。
その痛みはかなり強く、以前は腸管壁が噛まれることによる痛みと考えられていましたが、現在では抗アニサキス抗体(IgE, IgG, IgA)を介した炎症による痛みと考えられています。

アニサキス症の治療

胃アニサキス症の場合は、胃カメラで除去することにより症状は速やかに改善します。一方、腸アニサキス症では除去が困難なため、ステロイドや抗炎症薬により免疫反応を鎮静化することで症状の緩和を行います。アニサキスは人の体の中では数日しか生存できないため症状は自然に改善しますが、腸閉塞や腸穿孔などの重篤な合併症をきたした場合は手術が必要となることもあります。

アニサキス症の予防

アニサキス症は生きたアニサキスの体内への迷入により起こるため、アニサキスを殺すことができれば発症を抑制できます。アニサキスは-20℃以下24時間以上の冷凍や60℃以上1分以上の加熱で死滅するとされています。また、魚の内臓を新鮮なうちに除去することで、リスクを下げることが可能です。

アニサキスアレルギーについて

アニサキスアレルギーは、アニサキスを誤って摂取したのち数分から数時間で、蕁麻疹、喘鳴、呼吸困難、腹痛、嘔吐、下痢、血圧低下、意識障害などのアナフィラキシー症状を呈する疾患です。サバを食べて蕁麻疹が出た患者11人中、サバアレルギーの方は0名で、全例がアニサキスアレルギーだったという報告もあるくらい、重要なアレルギーの原因(アレルゲンと呼びます)です。

アニサキスアレルギーの治療

アニサキスアレルギーの治療法(予防法)は、摂取を避けることです。症状出現時は速やかに抗ヒスタミン薬を内服し、重症度に応じてエピネフリンを注射し、救急病院を受診します。

アニサキスアレルギーの予防

アニサキスアレルギーでは、アニサキス症のように、アニサキスを死滅させても予防はできません。アニサキスが死んでも、アレルギー症状を引き起こすアレルゲンは残るので、摂取によりアレルギー症状は誘発されます。アニサキスアレルゲンの中には熱に強いアレルゲンも存在するため、文字通り「煮ても焼いても食えない」のです。刺身や寿司など、生魚を好んで食べる方にアニサキスアレルギーが起こりやすいため、魚介類の摂取が難しいとわかったときのショックは大きいです。
予防するにはアニサキスが寄生している魚介類を避けることが重要ですが、どの魚にアニサキスがいてどの魚にいないのかを外から区別できないため、広く避けているというのが実情です。ただ、アニサキスが寄生しやすい魚介類(サバ、サンマ、イワシ、アジ、サケ、タラ、イカなど)と寄生しにくい魚介類(川魚や養殖魚(ノルウェーサーモンなど))がいることが知られています。そのため、アニサキスアレルギーがあっても川魚やノルウェーサーモンなどの養殖魚はほぼ問題なく食べられます。

アニサキスアレルギー診断の問題点

アニサキスアレルギーは、血液検査で抗アニサキスIgE抗体が高値であること、摂取した魚介類に対するアレルギーがないことを確認し、臨床症状がアニサキスアレルギーで矛盾ない場合に診断します。しかし、抗アニサキスIgE抗体の陽性率は魚介類の摂取量や年齢が上がると上昇することが知られており、漁村に住む健常人の3割に抗アニサキスIgE抗体を認めたという報告もあります。そのため、より正確な検査法が必要と考えられます。

アニサキス粗抽出液による皮膚プリック試験

アニサキスのプリック液(医薬品)が存在しないため、これまでプリック試験は、限られた病院でしか行えませんでした。当科においてもアニサキスアレルギーが疑われる方には、「海の魚介類を避けたほうが安全です。」という曖昧な対応にとどまっていました。
しかし2020年より、アニサキス粗抽出液を用いたプリック試験を当科外来で行えるようになりました。これにより、プリック試験が陽性だった方には「避けないと危ない」と再認識して頂いたり、陰性だった方には少しずつ食べる魚介類の範囲を広げていくことを提案することが出来るようになりました。

以上、アニサキスアレルギーについての一般的な話から、当科での最近の対応について説明させていただきました。

アトピー性皮膚炎の治療

ぴなこちゃんの皮膚科ドクターに聞いてみよう!アトピー性皮膚炎編

ぴなこ

こんにちは、ぴなこです!
今日は、アトピー性皮膚炎の治療について聞いてみたいと思います。
お話を聞いたのは、皮膚科の川島秀介先生です。

ぴなこ

アトピー性皮膚炎の治療に関して教えてください。

ドクター

アトピー性皮膚炎の治療の基本は薬物療法・スキンケア・悪化因子への対策です。
薬物療法が治療の中心となりますが、それだけではよいコントロールは得られません。
スキンケアとして、皮膚を傷つけないようにしながら清潔を保ち、皮膚のバリア機能を補うための保湿は重要です。また、汗やアレルゲン(細菌やダニ、ほこり、一部のひとには食物)の刺激を避け、ストレスをためずに規則正しい生活を送ることも大切ですよ。

ぴなこ

薬物療法に関して具体的に知りたいです。

ドクター

薬物療法はステロイドの外用薬が中心となります。「薬を塗るだけ」と思う方もいるかもしれませんが、外用薬は適切な強さの薬を、適切な場所に、適切な方法で、適切に塗ることが大切なんです。当科では、アトピー性皮膚炎で来院された患者さんに対し、まずはしっかりと外用指導を行います。外用の方法についてはアレルギー疾患情報サイト「アトピー性皮膚炎 予防と治療」に載っていますので、参考にしてください!

ぴなこ

外用をしっかり行っても良くならない場合もあるんでしょうか?
その時にはどんな治療がありますか?

ドクター

重症・難治性の方には外用療法に加えて、シクロスポリンの内服、光線療法、生物学的製剤などを提案することもあります。

ぴなこ

生物学的製剤ってどんな薬ですか?詳しく教えてください。
どんな人が使用する対象になりますか?

ドクター

現在、デュピルマブという生物学的製剤が保険適応になっています。
デュピルマブは注射薬で、2週間に1回皮下注射をします。はじめのうちは病院で注射をして、注射の手技を練習して自宅で自己注射をする人もいます。
対象となるのは、外用療法をしっかり行っても症状が抑え込めない重症や難治性の方で、検査などである一定の基準を満たした方です。適応年齢は15歳以上です。

ぴなこ

デュピルマブのメリット、デメリットを教えてください。

ドクター

メリットは、皮膚炎やかゆみの軽減が期待できることです。
また、症状の改善程度により、ステロイド外用薬の使用量が減らせることも見込めます。
デメリットとしては、注射の痛みや、外用薬に比べて高額であることです。また、まだ新しい薬なので長期的な副作用はまだデータがなく、わからない部分も多いため、本当に必要と考える患者さんにのみ、投与を考えます。

ぴなこ

デュピルマブを使ったら、今までみたいに毎日薬を塗ったり、スキンケアをしたりしなくてもいいんですか?

ドクター

ぴなこちゃんそれは違いますよ!
デュピルマブは、あくまでアトピー性皮膚炎の症状を抑えるための薬なので、デュピルマブを使っていても並行して外用療法やスキンケア、悪化因子への対策は必要です。前述しましたが、場合によってはステロイド外用薬の量は減らせる可能性があります。

ぴなこ

アトピー性皮膚炎の治療の基本は規則正しい生活や、スキンケア・外用薬なのですね!重症な方への治療選択肢も知ることができました。
川島先生、ありがとうございました!

そうなんです!まずは基本の治療がしっかりできているのか振り返ってみてください。正しい外用やスキンケアの方法は、アレルギー疾患情報サイト「アトピー性皮膚炎 予防と治療」に載っているからぜひ参考にしてくださいね。

ドクター

鼻アレルギー診療ガイドラインが改訂されました!

1998年、2008年と行われてきた耳鼻咽喉科医とその家族を対象としたアンケート調査が2019年に行われました。その結果がガイドライン改訂版に掲載されています(下図)。この結果をみると、アレルギー性鼻炎の有病率はこの10年間でも上昇しています。特にスギ花粉症の有病率の上昇が目立っています。また、年齢別にみてもほとんどの年代でスギ花粉症の有病率は増加し、特に、10-50歳代にかけて高い有病率を示しています。あくまで、耳鼻咽喉科医とその家族が対象ですので、全国民の有病率を代表するデータではありませんが、いまだにスギ花粉症が増えていることを示す結果と考えられます。
また、スギ花粉症の治療に関して、これまで重症の喘息や蕁麻疹で使用されてきた抗IgE抗体薬を重症のスギ花粉症にも使用することが出来るようになりました。抗ヒスタミン薬の内服やステロイドの点鼻薬を使用しても症状が改善しない患者さんを対象に使用することができます。スギ花粉飛散期に皮下注射でお薬を投与します。根治を目指すアレルゲン免疫療法とは治療のコンセプトが異なりますが、毎年お薬を使用しても症状に満足できない患者さんは専門医に一度相談してみてください。

アレルギー性鼻炎の有病率
耳鼻咽喉科医とその家族19,859例を対象にアンケート調査(2019年)

鼻アレルギー診療ガイドライン2020年度版(改訂第9版)

年齢別スギ花粉症有病率の変化

鼻アレルギー診療ガイドライン2020年度版(改訂第9版)

アレルギー性結膜炎とドライアイ

アレルギー性結膜炎は、花粉などのアレルゲンが目の表面の結膜に付着し、アレルギー反応が生じて目の充血やかゆみを生じます。

ドライアイ(いわゆる“かわき目”)により、涙が減少し、目の表面が荒れると、花粉などのアレルゲンが目の中に長くとどまり、アレルギー反応を引き起こしやすくなります。

また、アレルギー性結膜炎が悪化することで、目の表面に炎症などが生じて、さらに乾きやすくなります。

このようにドライアイの方では、アレルギー性結膜炎が悪化し、さらにドライアイも悪くなるという負の循環が生じています。

アレルギー性結膜炎とドライアイ

アレルギー性結膜炎とドライアイの治療法

左にスライドさせてご覧ください。

アレルギー性結膜炎 ドライアイ
  • 抗アレルギー薬
  • 副腎皮質ステロイド薬
  • 免疫抑制剤
  • 人工涙液点眼
  • ヒアルロン酸製剤(注)
  • 低濃度ステロイド点眼
  • ムチン産生促進
  • 涙点プラグ

(注)スイッチOTC(病院で使う薬と同成分)が2020年9月から市販されています 。

日常でできる対策は?

左にスライドさせてご覧ください。

アレルギー性結膜炎 ドライアイ
  • 花粉などアレルゲンを避け、接触しない
  • 手洗い、洗顔など
  • コンタクトは一日使い捨て
  • 保護用ゴーグル
  • エアコンなど調節し、室内を加湿
  • コンタクトよりは眼鏡
  • 画面(スマホ等)を長時間凝視しない
  • 保護用ゴーグル
保護用ゴーグル

花粉の侵入を防ぎ、目の乾燥を予防する効果もあり各種市販されています。
ウイルス対策にも有効!

トピックス

花粉症対策にアプリを活用し自己管理を

欧州におけるアレルギー性鼻炎の国際的なガイドラインであるARIA(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)との国際共同研究を行っています。

MASK-airポスター

お問い合わせ
メール: jibisiken@chiba-u.jp

千葉大学病院広報誌「いのはなハーモニー52号」で、アレルギーセンターを特集しました。