薬剤部長 石井伊都子
近年、医療の高度化や合併症による病態の多様化に伴い、薬物による治療が複雑になっています。又、分子標的薬など詳細な科学的エビデンスに基づき開発されるお薬が増えています。薬も低分子化合物から蛋白に至る高分子化合物まで、様々な大きさや性質のものが使われており、その組み合わせも複雑です。
薬剤師は医療職の中で物事を最も「化学的」に解釈する職種です。薬が効くことも副作用が出ることも「化学的」に理解し、「化学的」に解決しようとします。上述した複雑な組み合わせも、この「化学的」視点をもって見てみると、影響ない組み合わせか危険な組み合わせかを判断することが可能です。私たちは、何より患者さんに最も適したお薬を安全に使って頂くために、私たちのもつ「化学の目」でリスクを見出し、より良いお薬を提供できるように精進していきたいと考えています。
これからの薬剤師は、薬剤部内で薬を調剤するだけでなく、病棟で、つまり患者さんのベッドサイドで医師や看護師と一緒に患者さんの薬物治療に貢献していかなくてはなりません。患者さんの容態や状況に適したお薬を提案する、患者さんの薬による副作用をモニタリングするなどが薬剤師の病棟活動に当てはまります。又、患者さんの様子を診て血中薬物濃度測定や遺伝子診断を提言する等、個別化医療が実現可能となります。
医療従事者は患者さんの主体的意思を大切にし、患者さんの幸福と満足を追求することが医療の本質であると考えます。このような患者中心の医療を実現するためには、多くの専門職が連携し、チームとして患者さんの治療を支えることが大切です。病棟において薬剤師が日常的に患者さんに関わり他職種と連携している、その結果、躍動的なチームが出来上がっている、これが私の考えるチーム医療です。
そのためにも、薬剤師は「化学の目」の研鑽を積み、多くの医療人と共に患者さんの薬物治療に貢献したいと考えています。