病態に関する説明用紙

臍ヘルニア

 

 

1.症状

 へその緒が取れた後、おへそがとびだしている状態を臍(さい)ヘルニアといいます。

内容は腸管のため、触れると柔らかく、圧迫すると容易にへこみます。しかし、泣いたりしておなかに力が加わるとまたすぐに腸が出てしまいます。

 

 

2.臍ヘルニアの病態

臍ヘルニアは、へその緒があった部位の筋肉が完全に閉じきらないため、図の様に腸管が脱出し、臍が膨隆する状態のことをいいます。

1ヵ月頃より、赤ちゃんの510%にみられ、生後3ヵ月頃まで増大します。しかし、9095%の方は、おなかの筋肉が発達してくる1歳頃までに自然に治ります。一方、2歳を過ぎて膨隆が続いている場合、自然に治ることはほとんどありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.臍ヘルニアの嵌頓(かんとん)について

脱出した腸管が戻らなくなり、血流障害を引き起こす状態を嵌頓といいます。臍ヘルニアで嵌頓を呈することは極めて稀です。

 

 

 


手術説明用紙

臍ヘルニア根治術(臍形成術)

 

1.根治手術の必要性について

 1歳までに90%以上の方が自然治癒しますが、2歳を過ぎた年長児では自然に治癒することはほとんどありません。この場合、手術以外の方法での改善は見込めません。臍部の膨隆が継続する場合、美容的観点から手術を考慮します。美容的な要素の強い手術であるため、仕上がりについては十分に医師と相談の上、手術を受けてください。

 

2.手術方法について

1.       膨隆した臍の下半周を切開します。

2.       臍ヘルニアの原因である、筋肉が開いている部位を縫合閉鎖します。

3.       臍の皮膚の最下点を筋に縫合固定し、くぼんだ臍になるように形成します。

4.       術後しばらくは、臍の中に綿球をつめて圧迫固定し、くぼんだ状態を維持します。皮膚の縫合は吸収糸(とける糸)を用いますので、抜糸の必要はありません。

5.       手術時間は12時間です。

臍膨隆が極めて大きい場合、上記とは異なる手術法になる場合があります。

 

3.期待される結果

臍が膨隆しないようになります。

 

4.可能性のある合併症

出血              術中及び術後に出血する場合があります。術後出血は圧迫で止まることがほとんどです。

創感染           皮下に感染した場合、術後1週頃に発赤・腫脹の後、膿が出ることがあります。消毒することで治癒しますが、治癒後の外観が悪くなります。臍は汚くなりやすく感染しやすいので、術前日までよく洗うようにしてください。

縫合糸膿瘍    体内に残った糸への感染です。術後かなり時間が経過した後に発症することがあります。創部から膿が出た時に、一緒に糸が出れば治癒します。

腫脹              創部周辺の腫脹が強くなる場合や、長期間に及ぶ場合があります。青あざのような状態となることもあります。これらに伴い、創部の疼痛がやや長引く場合がありますが、自然に軽快します。

周辺臓器への損傷・影響

                     手術操作において、周辺臓器(腸管)を傷付ける可能性があります。損傷に対しては、術中に修復を行います。

嘔気・嘔吐    術後、嘔気・嘔吐により経口摂取が遅れる場合があります。

その他           予期することの困難な、極めて稀な合併症が生じる可能性があります。迅速に対応すると共に、適宜病態の説明を行います。

 

5.当処置を受けない場合に予測される病状の推移

臍ヘルニア嵌頓をきたす事は極めて稀で、身体的な障害はほとんどありません。2歳以上では自然治癒の可能性が低く、臍が膨隆した外観が継続します。

 

 

 


 

入院・手術・退院後の予定

臍ヘルニア

 

当科の手術日は水・金曜日です。手術前日の午前中に入院していただきます。

 

@ 入院1日目       (火or木)

入院当日は、水分、食事は自由に摂れます。

当科で手術を担当する医師より手術に関する説明があります。

麻酔科医師により麻酔に関する説明があります。この時に手術当日の飲食の指示があります。

 

A 入院2日目:手術 (水or金)

手術室に入るおおよその時間は前日決定します。ただし、ほかの手術の進行状況により多少前後することがあります。

帰室後12時間は泣いたり暴れたりすることがあります。多くの場合、痛みのためではなく、麻酔からさめた後の一時的な興奮状態によるものですので、心配は要りません。手術中に大きな合併症がなければ通常帰室後2時間より水分を摂ることが可能です。水分を飲んで30分様子を見て、嘔吐、吐き気がなければ食事を摂ってもさしつかえありませんが、はじめは慎重に少しずつ与えてください。

必要に応じ痛み止めの座薬を使います。

 

B 入院5日目:退院 (土or月)

朝回診で傷や全身の状態を診察します。問題がなければ退院となります。

会計箋をご用意できる時間がお約束できないため、次回の外来受診時に会計をお願い致します。当日会計をご希望の方は、事前にお伝えください(土日は会計業務ができません)。

 

C 退院後

退院後の外来受診日は、水曜日に手術を受けた方は翌週の火曜日、金曜日に手術を受けた方は翌週の木曜日です(通院が困難な場合、担当医にご相談下さい)。その時まで、入浴・シャワーは出来ません。手術創の消毒は必要ありません。創に張ってある絆創膏が、尿・便などで多少汚れても問題ありません。激しい運動、傷をぶつける、擦ることは、出来るだけ避けてください。鉄棒など傷を擦りつける運動だけは術後1ヶ月は止めてください。ご心配なことがあれば電話にて指示を受けてください。