テンプレートを備えた電子カルテとその膠原病内科領域での応用
19951009
山崎俊司、里村洋一、新井健三、鈴木隆弘、本多正幸、高林克日己*
千葉大学医学部附属病院医療情報部 *千葉大学医学部第二内科
電子メール:yamazaki-cib@umin.u-tokyo.ac.jp
The template assisted electronic medical record system and it's application of practice of outpatient clinic for collagen diseases.
Shunji Yamazaki, Yoichi Satomura, Kenzou Arai, Takahiro Suzuki, Masayuki Honda, Katsuhiko Takabayashi*
Division of Medical Informatics Chiba University Hospital, Second Department of Internal Medicine School of Medicine Chiba Universtiy*
Abstract
An electronic medical record with flexible template generation has been developed. The "template" in this paper is defined by not only a framework of medical record but also serves as a reminder and warning function along with tools that calls user's attention to entering data. All the data are entered according to the formulation of メcheck itemモ. The メcheck itemモ means signs, symptoms, laboratory tests and other examinations and the data representation of check items are defined in the check items dictionary. A combination of template function and check items allow consistency and integrity of medical record description. A representation of degree in each check item is defined in a categorical way and is easily converted into numerical data. Graphical presentation of various patient data including signs and symptoms can be provided in this system. A preliminary application of this prototype was started in the clinic for collagen diseases at Chiba university hospital.
keywords:template, check item, data representation, standardization, electronic medical record, collagen diseases
Contents
はじめに
1 チェック項目
2 テンプレート
3 サマリーボード
4 グラフと画像の表示
5 膠原病内科領域への応用
6 考 察
7 おわりに
8 References
千葉大学医療情報部では、1)患者の問題点毎に整理された病歴データ記録、2)簡易な入力機能、3)医療情報のグラフィカルな表示、4)病歴記録データ形式の標準化を目標とする電子カルテシステムの概念モデル、およびそれに基づくプロトタイプを作成した。
本電子カルテシステムは、テンプレート機能を備えていることと、データ単位としてチェック項目を用いることが特長的である。
概念モデルの改善点とともに、膠原病内科領域へ応用した、この経験をもとに問題点を論じる。
本システムでは、すべてのデータはチェック項目という形で入力する。チェック項目の名称には標準化された医学用語が用いられる。のみならず、データの入力形式も規定した制限言語方式をとりその為のシソーラスを準備する。
チェック項目ことに部位、程度、発症様式、性質などを属性として定義する。さらにその各属性のデータのタイプや表現形式を規定する。
表1 チェック項目の例
| 項目名 | 関節痛 |
| 部 位 | 関節名 |
| 程 度 | なし/あり 5段階評価(1、2、3、4、5) |
| 発症様式 | 急性/慢性 |
| 発症時間 | 午前/午後、夜間、持続性 運動時/安静時、動運後 |
| 性 質 | 鋭い痛み、鈍痛 移動性/固定性 |
特にチェック項目の程度については、5段階評価など、数値化できる表現形式を決定する。
このような標準化されたチェック項目の定義に基づいてデータ入力した場合、多数の医師が同一の基準に基づいた記録を造り出し、所見、症状が数値で表された臨床検査データと同様に経過グラフ上に表現可能な環境を提供できる。
チェック項目はSNOMEDコードとの対応を持たせ、これによって言語に依存しない診療記録が実現できる。
チェック項目はチェック項目辞書に定義されるが、この辞書はヴァージョン管理され、医学における変化に対応する。
2.1 テンプレート機能
入力機能の一つとして、テンプレートを考案した。テンプレートとは、患者テンプレートに設定されたチェック項目群を受診毎にあるいは定期的にユーザー側に問いかけ、データの入力またはオーダーを誘導する機能である。テンプレート機能の目的は入力の簡素化をはかると共に記録の不安定さを阻止し、リマインダとして日常臨床業務上の見落としや必要な検査の無意味な遅延の防ぐことにある。
原則として、入力画面ではチェック項目を一覧可能なように配置する。
2.2 標準テンプレート
ある疾患、病態が存在するとき、または存在が疑われるとき、一般的に、その有無や状態を確認しなければならない項目を選んで標準的な組み合わせを作る。これを標準テンプレートと言う。
標準テンプレートには、初診時用、診断支援用、経過観察用、サマリー用を用意する。
初診時用テンプレートには、主訴、現病歴、家族歴、既往歴、身体所見などの特殊なチェック項目がセットされている。診療者や施設による差異は余りないところであるが、大学病院等では診療科によりカスタマイズすることも考慮する。
診断支援用テンプレートには、疾患、病態が疑われるとき、あるいは経過中再度評価する必要のあるときに確認すべき項目をセットする。
経過観察用テンプレートは、慢性疾患の経過を追うときに用いられる。ある疾患、病態の活動性の指標や、合併症の有無の確認、治療による副作用の確認などの項目を含む。
サマリー用テンプレートは、退院要約、外来での定期的まとめや紹介状を作成する時に用いる。
2.3 患者テンプレート
担当医は患者のもつ問題点に対応する標準テンプレートを選択し、患者毎の個別性を考慮し、標準テンプレートの項目から不要と思われる項目を削除したり、チェック項目辞書から追加し、患者テンプレートを作成する。
図1 患者テンプレート
各チェック項目に対し、その項目の確認時期ないしオーダー間隔を設定できる。その時期を越えると入力を要求しメッセージを表示するリマインダ機能をもつ。
チェック項目の確認時期設定で、毎回記入を「必須」に設定すると、入力しないと他の作業に進めなくなるなどのアラーム設定も可能である。
検査データなどは検査結果データベースから自動的に与えられるが、症状、症候は、直接数値入力するか選択式で入力するように設計されている。
ワープロ的機能を用いて、自由文での入力も許している。これらは、各プロブレム、ないし患者テンプレート全体にリンクすることができ、問題点毎のデータの整理を容易にする。また、各プロブレム、又は患者全体の評価を記録することも可能である。
退院要約、外来での定期的まとめや紹介状を記載する機能と、診断の根拠やこれまでのデータの経過をまとめて表示する機能をもつ。ここでは、サマリ用テンプレート、診断用支援用テンプレートが用いられる。
まとめの多くは、データタイプが自由文であるチェック項目の特殊形を用いて記載するが、医療機関の間のデータのやりとりのため、医療情報学会電子カルテ研究会の提唱するデータ交換のための標準プロトコルであるMMLへの変換もサポートする。
診断の根拠となったデータの一覧を表示する機能や診断根拠となったデータや同じチェック項目の最新のデータ、その項目の最悪のデータなどを選んで表示する機能も与えられている。診断や経過評価の為のエクスパートシステムとのリンクも計画している。
データ表示機能としては、従来の病歴書の形式に表現するもの、プロブレム毎に経時的に表示するもの、診断プロセスの解析ツール、多くの医学データをグラフィカルに表示する表示機能などを持つ。様々な医療画像も、参照レベルの解像度で、表示可能である。
従来の検査報告画面に加えて、投薬内容などの治療や、チェック項目のデータや検査データ
さらに、入院期間や、手術日などのイベントを一
つのチャートに経過表の形式で表示できる。チェック項目のデータ形式の規定することにより、症状、所見も経時的にグラフ化が可能で、
検査データ、処方データ等とともに温度板や、経過表を作成表示する。
図2 トレンドグラフ
5.1 方 法
千葉大学医学部附属病院第二内科の膠原病外来において筆者の担当する全身性エリテマトーデスの患者を対象に、電子カルテを用いて実際に診療を行った。週一回で一日に1〜2名の患者を対象とした。オーダーエントリは既存の病院情報システムsystem CHIBAを用い、従来のカルテには診療終了後同内容を記載した。チェック項目、標準テンプレートは、全身性エリテマトーデスを診療する上で必要と思われる項
目についてのみ作成した。
5.2. 結 果
現在まだ症例数は少ないが、オーダーエントリとの連係、日本語入力における医学辞書の充実が十分であれば、自由文入力を含め、カルテ記入は診療者に負担にはならないと思われた。むしろ、テンプレート、チェック項目の完成度が低い場合、記録したい微妙なニュアンスが電子カルテ上表現しづらいことがわかった。
診療録の雛形としてのテンプレートは、他の研究者も考案しており、またすでに商業的に販売されている電子カルテシステムにも実装されている。しかし、疾患、病態ごとに、テンプレートのテンプレートとも言うべき、標準テンプレートを用意し、患者毎に自由性をもたせた点は、このシステムの特長である。
チェック項目のような診療データの表現形式を標準化しているシステムは筆者の知る限りでは存在しない。
他の多くの電子カルテシステムでは、データの記載は自由文で行われる。患者の表現をそのまま記載するなど不定形な情報を、自由に取り扱うには自由文での入力に勝るものは無いといえる。まさに紙製カルテと同様な自由度を持つとも言える。
しかし、各所見をグラフ化して一覧性のメリットを得ようとするならば、チェック項目のようにデータ形式の標準化と数値化可能なデータ表現が不可欠である。医療情報のグラフィカルな表示は、電子カルテならではの機能であり、ある意味では最も有用な電子カルテのメリットである。
トレンドグラフにおいて、期間、項目、目盛の変更、処方内容、入院期間の表示等が容易にでき、表示させて見ては作りなおすといったことが可能であれば、検査データ同士、検査データと処方との関連、患者病態の変化、処方した薬剤の有効性、検査値の変化と薬剤の副作用との関連などが認識しやすく、診療上の意思決定支援が可能である。とくに、表示期間を変えてグラフを表示させることで、新たな事実を発見することがあり、また、グラフを用いて患者に説明することが可能で、患者の理解を深め、服薬コンプライアンスの向上を期待できる。
チェック項目を用いず、自然語解析により、自由文より必要なデータを抽出する方法も考えられるが今日のところ、自然語解析の技術は信頼に足るものではない。
チェック項目に何らかのrigidityを感じる諸子は多いかもしれない。しかし、整合性、一貫性に価値を置き、データの流通を考えるときある程度の規律は不可欠である。
電子カルテの特長を引き出し、なおかつ、臨床医学への貢献を期待できる方法として、私達のアプローチは有用であると考える。
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