
尿検査
尿は通常患者さんの苦痛を伴わずに排泄され, また体の様々な状態を反映することから, 臨床検査としてよく利用されています. ここでは, 尿の成り立ちや尿検査の目的, また知っていて欲しい注意点などについてふれます.
(1)尿の成り立ち
:尿は, 血液中の代謝産物・老廃物などが, 腎臓によってろ過され, 膀胱で一旦留まった後, 尿道を経由して排泄されます. 腎臓は, 老廃物の排泄や, 血液のpH, 水分の割合, 各種イオン濃度(ナトリウム, カリウム等)などを常に一定に保つために働いています. 全身を流れる血液は, 各種臓器/組織に栄養を運び, 代謝産物や老廃物を受け取って腎臓に到着します. 腎臓の中の糸球体は目の細かい濾紙のごとく, ある大きさ以下(サイズバリアー)で且つ一定電位以下(チャージバリアー)の物質を通過させます. これは原尿と呼ばれます. 次に, 尿細管という部分において, 一旦排泄された物質の中で水分及び体に必要な物質を再吸収します. こうして残った尿が膀胱に溜まり, 体外へ排泄されます. 一例を挙げますと, 血液中のブドウ糖(血糖)は尿細管で一旦すべて排泄された後, 尿細管ですべてが再吸収されます. 血液中のブドウ糖濃度が必要以上(およそ180mg/dl 以上)になると, この再吸収能力が追いつかなくなり, 尿にブドウ糖が排泄されてしまいます(糖尿病).
このように, 尿の様々な成分は血液の状態を反映していることから, 尿を検査することで血液の状態を間接的に把握することができます. また尿生成に関与している腎臓, 膀胱,
尿道などの状態も直接尿に反映することから, これら腎・泌尿器系臓器の状態を把握する指標にもなります.
(2)尿検査の目的
:前述の様に, 全身の状態を把握することと, 腎・泌尿器系臓器の状態を把握するという2つの目的に大別されます. また血液検査等と比べて, 尿は通常患者さんの苦痛を伴わずに自然に排泄されたものを検査します. この様な非侵襲的な検査であることが尿検査の最大の利点です.
ところで, 尿は血液の状態を間接的に反映していますが, 血液検査と比べた場合, 感度は必ずしも高くありません. 例えば, 肝臓疾患によって血液中のビリルビン(黄疸の原因)が上昇した場合, 尿にこのビリルビンが排泄されて尿が濃い黄土色を呈する場合があります. この時, 患者さんの顔色や白目の色に変化が現れる以前に尿にビリルビンが検出されますが, これは先に血液中ビリルビンが上昇した結果現れたものです. つまり尿中ビリルビンより血液中ビリルビンの方が先に上昇しているわけで, このような全身状態の把握という点では, 血液検査に一歩譲ります. しかし, 腎・泌尿器系の疾患では尿に最初に変化が現れる物や, また尿にしか変化が現れない物があります. 前者の例としては, 腎臓疾患の初期に尿中蛋白や顕微鏡学的(肉眼ではわからない)血尿が出現し, その後病気が進行した後, 血中のクレアチニンや尿素等が上昇してきます. 後者の例では, 尿路結石による結晶成分や血尿, 膀胱腫瘍における腫瘍細胞出現などが代表的です.
(3)尿のいろいろな検査
尿検査の代名詞となっている尿試験紙検査は, 比較的簡単で低コストであり, 試験紙によっては10項目以上の生化学成分がチェックできます. 尿の肉眼的な色調, 濁り, 異臭(臭いかどうかだけではありません)と合わせ, 主にスクリーニング(洗い出し)的な検査として利用されています. ここで異常が確認された場合は尿の精密検査へ進みますが, 特定の疾患が疑われた場合は最初から尿精密検査が行われることもあります. 代表的な精密検査をあげると, 尿生化学的検査, 尿形態学的検査(尿沈渣/尿細胞診), 尿細菌検査等があります.
1)尿の肉眼的観察及び尿試験紙検査:もっとも基本的な検査として良く利用されています. 血尿(女性の生理中以外)では尿路結石や膀胱腫瘍など, 混濁した尿では膀胱炎などが疑われます. また尿試験紙では, ブドウ糖(糖尿病), 蛋白(主に腎疾患), pH(全身状態), 顕微鏡学的血尿検出(腎疾患・泌尿器系結石/腫瘍), 白血球(膀胱炎, 尿道炎), ビリルビン・ウロビリノーゲン(肝疾患), 比重(尿の濃さの指標)などが代表的です.
検査結果は-, ±, +, +2 等の表現が良く使用されています(半定量表記).
2)尿生化学的定量検査:尿中の蛋白質, ブドウ糖, 各種イオン, 他の化学的物質濃度の定量などが行われます. 血液検査値とのバランス(クリアランス)から, 腎機能状態を把握することもできます. また血液中からすぐに排泄されてしまう, ある種のタンパク質, 酵素, 腫瘍マーカーなどを測定することで, 血液検査より高感度に疾患を検出できる場合もあります.
3)尿形態学的検査:腎臓から膀胱や尿道を経由する尿には, それぞれの臓器由来の細胞や結晶化した塩類などが混入することがあります. 一般的には尿を遠心分離して集めた後, 染色液で色付け(しない場合もあります)して顕微鏡で観察します. 一般に赤血球, 白血球, 各種円柱様成分, 膀胱/尿道由来細胞, 各種結晶などの検出を目的として行われます. 尿酸や蓚酸カルシウム結晶などは顕微鏡で見るときらきら光って意外に綺麗です. また, 膀胱などの腫瘍が疑われる場合は, 細胞診と呼ばれる精密検査が行われます.
4)尿細菌検査:膀胱や尿道に細菌性の炎症が疑われる場合は...
(4)尿検査を受ける時の注意点
尿は体の様々な情報を提供してくれます. 検査の有効性をより高めるためにも, 以下の点にご注意下さい.
尿検査を受けて戴く場合, 普通はそのまま尿コップに採尿するように指示されますが,
早朝尿, 中間尿, 時間尿, 蓄尿などの採尿法を指示される場合もあります. 先に記しましたいろいろな検査目的によって採尿法が異なることが良くありますので,
できるだけ指導された通りに採尿して下さい. わからないことは遠慮無くスタッフに質問して下さい. 生理中で尿に血液が混入してしまい易い時期などは,
尿検査を指示されたとき, または尿提出時に担当医・スタッフなどに申し出て下さい. また排尿直後で尿がとれない時は,
お水などを飲用後30分程度待ってみて下さい. 検査に使用する尿量は検査の種類によっても異なりますが,
尿コップに2-3センチ(20cc位)あれば殆ど間に合います. くれぐれも足りなそうだからといって水を足したりしないように!!(検査室でおおごとになります).
また, 尿の性状, 特に濃さは, 水分の摂取量や汗のかき具合いなどで変わります. このため, 濃いときと薄いときでは蛋白質, ブドウ糖などの濃度も変わってきます. これは尿検査の最大の欠点です. 24時間蓄尿や時間尿が指示されるのはこの理由からで, 単位時間あたりの各種成分の全排泄量を求める目的で行われます. この様な採尿を指示されて(入院中によく行われます)もし尿をこぼしてしまった場合などは, 検査が無意味になるだけでなく, 医師の誤った判断の基にもなります. 充分気を付けて採尿して戴くと共に, こぼした時などは, 必ず申し出て下さい.