千葉大学医学部附属病院 検査部
Division of Laboratory Medicine, Chiba University Hospital
 
血液検査室

「血液検査」というと、一般的には病院などで採血をしてその血液を全般的に検査することをいいますが、「血液検査室」ではその中でも特に、赤血球、白血球、血小板、ヘモグロビン、ヘマトクリットなどの測定(血球算定)や、これらに関する各種の特殊検査などを行います。救命救急が舞台のドラマやドキュメンタリーで、医師などが「けっさんせいか!」と言っているのを耳にしたことがあるかもしれませんが、「けっさん=血算」は血液検査室でおこなっている血球算定のことをさします。

 

<血液検査室検査項目>

血算 赤血球 貧血・多血などの指標
白血球(WBC) 細菌・ウイルスの感染や炎症、アレルギーなどの指標
血小板(PLT) 止血の役割の一部を担う
ヘモグロビン(HGB) 赤血球に含まれる血色素
ヘマトクリット(HCT) 総血液量に対する赤血球の割合
MCV・MCH・MCHC 赤血球の容積、含まれるHGBの量や濃度の情報
網赤血球(RET) 赤血球の一歩手前の段階にある未熟な赤血球
白血球分画(末梢血液像) 総白血球数に対する各種白血球の割合
フローサイトメトリー 細胞表面の性質を解析することにより、白血病の分類や感染症の感染度合いを調べる。
FISH 染色体を解析して白血病の分類を行う
骨髄検査 骨髄穿刺で得た骨髄液を用いて、細胞の算定や分画、フローサイトメトリーやFISHなどを行い、血液疾患の診断・治療経過観察・癌の骨への浸潤の評価などを行う
特殊検査 赤血球抵抗試験 赤血球の脆弱性を調べる。遺伝性球状赤血球症の精査
血小板凝集能 血小板機能の一つである凝集能を調べる。血小板無力症、von Willebrand病などの検査

 

多数の検体を正確に測定し、できるだけ迅速に結果を患者さんへお返しするため、ほとんどの検査項目は上の写真のような自動血球分析装置で測定を行っています。しかし、白血球分画に関してはその数値だけでなく、必要があれば血液をスライドガラスに塗抹(ガラス面に薄く塗りつけること)をして染色を施し、臨床検査技師が顕微鏡を用いて直に目で見て、個々の細胞に異常がないかを観察しています。

 

健康な人の白血球は主に、それぞれ異なる形態・性質を持つ好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球の5種に分類され、ほぼ一定の割合でバランスをとっています(白血球分画)。しかし、体に異常があると白血球全体におけるそれらのバランスが著しく崩れることがあります。例えば、細菌やウイルスによる感染などでは好中球・単球・リンパ球が、アレルギーなどがあれば好酸球・好塩基球が増加し、また、各種の血液疾患・薬剤や放射線の影響などで増加あるいは減少するので、白血球分画は治療方針や診断補助のひとつにもなる大切な検査です。

 

その他にも、赤血球、白血球、血小板の数や形態に異常が見られた場合、その原因を確定するため、これらが造られるおおもとである骨髄(骨の中の空洞を満たす柔らかい組織)の検査をすることもあります。採取した骨髄では、細胞数や形態の観察に加え、白血病の分類やウイルス感染の程度を知るため、さまざまな特殊染色(通常の染色では捉えきれない、細胞ごとの特徴の違いを観察する)、遺伝子・染色体検査や細胞表面抗原(細胞の性質を決定付けるタンパク質)の解析(フローサイトメトリー)などの特殊な検査を行う場合もあります。