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在宅で心臓移植を待つ「体内植込型」補助人工心臓

いのはなハーモニー48号(2017年1月) 掲載PDF(PDF形式 2,088KB)

心臓移植を待つ人の頼れる存在に

心臓の働きをサポートする「補助人工心臓」。
ポンプを体の外に置く「体外設置型」と、体の中に入れる「体内植込型」があり、当院が先進的に取り組む体内植込型についてご紹介します。

心臓血管外科教授(科長)
松宮 護郎

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心臓移植を待つ数年間を入院せずに過ごせるように

補助人工心臓とは、血液を全身に十分に送ることができなくなった心臓を補助する装置で、2タイプあります。

「体外設置型」は小型冷蔵庫サイズで、患者さんが常にその装置とつながった状態となり、入院が必要です。一方、「体内植込型」は、親指大のコンパクトな装置で、患者さんの体内に植え込み後、生活指導などのプログラムを終了すると、ご自宅でお過ごしいただけます。

ただ、装着を許可されている患者さんは限られます。日本では、「重い心不全を患い、心臓移植が必要と判定された患者さんのみ」許可されている治療です(2010年~)。

心臓移植の待機期間は3年を超えるといわれており、患者さんにとって自宅で待つか、病院で待つかは、大きな違いになるでしょう。「病院で大きな装置をつけたまま過ごしていたので、楽になりました」「家で生活できるので、手術してよかった」など、患者さんからも好評です。

重症の心不全の患者さんを助ける補助人工心臓

「体外設置型」補助人工心臓

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「体内植込型」補助人工心臓

  • 直径約2.5cmの人工心臓 写真
    直径約2.5cmの人工心臓
  • 小型バッテリー 写真
    小型バッテリー

人工心臓を体の外に装着し、患者さんの体と太い管でつなぎます。バッテリーを使用することにより、1時間程度の院内散歩ができますが、装着したまま退院することはできないため、入院を余儀なくされます。体内植込型に比べ、体外設置型は体外に出す管の太さが太く、傷口が大きくなるため、感染症のリスクが体内植込型よりも高く、入院して看護師によるケアが必要です。

直径2.5cmほどの小さな人工心臓を患者さんの体内に植え込み、駆動させるための小型バッテリーと患者さんの身体を細い管でつなぎます。在宅で過ごせますが、感染症を予防するためにお腹から出る管を消毒したり、バッテリーのメンテナンスを行う必要があります。

欧米並みに対象患者を広げるため、当院で治験を行っています

当院は千葉県の「体内植込型」の実施施設に認定されており、(2012年~)これまでに21例の手術を行っています。そのうちの17人は退院し、月1回の通院以外は、買い物などの外出や軽いスポーツを楽しむなど、普通の生活を送りながら心臓移植を待っています(1人はすでに移植を終えました)。

治療には、医師だけではなく、看護師・臨床工学技士などの専門職が力を合わせています。他の診療科との連携も不可欠ですので、院内に多くの診療科を持つ千葉大学病院ならではの総合力が発揮されています。

なお、欧米では心臓移植の待機患者に限らず、心臓が弱い患者さんにも体内植込型を装着し、「デスティネーションセラピー」といわれる永久の植え込み治療が年間1000例以上行われています。

日本でも、生活の質(QOL)向上につながる体内植込型をもっと欧米並みに活用できるよう、現在、当院をはじめ全国7施設で治験を行っているところです。

プロフィール

心臓血管外科教授(科長) 松宮 護郎
1986年に大阪大学医学部卒業。2009年10月より現職。趣味はゴルフ。広島市出身の広島カープファンで「2016年シーズンは熱狂しました」。

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