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NK4遺伝子を用いた悪性中皮腫の臨床研究

いのはなハーモニー43号(2015年10月) 掲載PDF(PDF形式、2,573KB)

NK4分子でがん細胞を抑える!
新たな治療法開発のための臨床研究が始まっています

治療法が確立されていない「悪性中皮腫」に対し、がん細胞の増殖抑制が期待されるNK4遺伝子を用いて治療する臨床研究に取り組んでいます。

呼吸器内科 講師 多田 裕司
千葉大学大学院医学研究院分子腫瘍生物学 客員教授 田川 雅敏

多田講師、田川客員教授 写真
多田講師(写真右)、
田川客員教授

アスベストなどが原因とされる「悪性中皮腫」を治したい

肺や心臓などの臓器は、それぞれ胸膜や心膜といった膜で包まれています。この膜の表面「中皮(ちゅうひ)」にできるがんが「悪性中皮腫」です。

悪性中皮腫の多くを占めているのが、胸膜の中皮に発生する「悪性胸膜中皮腫」です。アスベスト(石綿)を職業的に扱ったことがその原因と考えられており、胸水がたまることで呼吸困難などの症状を引き起こします。しかし、確立された治療法はまだ少なく、多くの患者さんは抗がん剤治療を受けているのが現状です。

そこで、呼吸器内科では新たな治療法開発を目的に、今年8月に「NK4遺伝子を用いた悪性中皮腫の臨床研究」を開始しました。

NK4分子は細胞の増殖を担う分子と構造が良く似ており、正常な細胞を傷つけずにがん細胞の増殖を阻害するほか、がん全体の栄養供給も抑制する効果が期待されています。治療法としてはNK4遺伝子を、病原性を取り除いた安全なアデノウイルスを使ってがん細胞まで運び、合成されるNK4タンパク質分子でがん細胞の機能を低下させます。

当院ではこのNK4分子の持つ機能に着目し、将来的には、がん細胞を死滅させることができる治療法を目指しています。

NK4遺伝子を用いてがん細胞の増殖を阻止!

がん細胞の増殖を阻止 図

長年のオールジャパン体制での研究早期の実用化を目指して

これまで千葉大学では、大阪大学・金沢大学・神戸大学・東京女子医科大学・東邦大学と共同研究を実施し、いわばオールジャパン体制で、NK4遺伝子を用いた治療の臨床開発を進めてきました。

NK4遺伝子を用いた悪性中皮腫の治療は患者さんへの負担が少ないため、研究が進めば、通常の治療を受けている患者さんに併用したり、従来の治療法を実施できない患者さんにも治療を行うことが可能になるのでは、と期待されています。将来この研究成果を、より多くの方の治療に役立てることができるよう、日々努力をしております。

臨床研究の詳細は、千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学ホームページを確認ください。

千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学ホームページへ新しいウィンドウで開きます

プロフィール

呼吸器内科 講師 多田 裕司
1992年、岡山大学医学部卒業。2014年4月より現職。学生時代は柔道部で活躍。「自転車、バイク、車、電車、飛行機、何かに乗って移動している時間が好き」。
千葉大学大学院医学研究院分子腫瘍生物学 客員教授 田川 雅敏
1979年に千葉大学医学部卒業後、スタンフォード大学医学部研究員などを経て、2005年より現職。趣味は美術館めぐり。