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健康な人の腸内細菌を注入する「糞便移植療法」

いのはなハーモニー42号(2015年7月) 掲載PDF(PDF形式、2,829KB)

腸内フローラ?糞便を移植って?
腸炎治療の新たな取り組み

薬や抗生物質では治療が難しい腸炎の患者さんの症状を改善するために、「糞便移植療法」という新しい治療法の臨床研究に取り組んでいます。

消化器内科助教
中川 倫夫

中川倫夫 写真

バランスの乱れた腸内フローラに正常な腸内細菌を注入

原因がわからない難治性の「潰瘍性大腸炎」。この病気に悩む患者さんは、日本で約16万人に達していると言われています。現在は、薬で炎症をコントロールしていますが、重症な場合は大腸を摘出する手術を行うこともあります。

当院では、この難病に悩む患者さんに健康な人の腸内細菌を移植する「糞便移植療法」の臨床研究に取り組んでいます。健康な人の便と生理食塩水を混ぜて液体化したものを、内視鏡を使って患者さんの腸内に注入するという新しい治療法です。正常な腸内細菌を患者さんの腸内フローラ(腸内細菌が多数集まっている場所)に注入することで、腸内細菌のバランスが正常化し、症状の改善が期待できます。

糞便移植療法の方法

糞便移植療法の方法 図

安全性を確認してさまざまな病気の治療に

写真3
臨床研究に取り組む
中川医師(左)と對田医師(右)。
「ろ過した正常な腸内細菌の溶液を、内視鏡を使って移植します」

この治療法は、倫理的な配慮のもと、ドナーとなる方は二親等以内の親族とさせていただいています。さらにドナーの方は、当院でのさまざまな検査をパスした「健康な糞便」を有している必要があります。この選別がやや困難だということを、患者さんに留意していただかなければなりません。

当院では、今年3月に1人目の患者さんにこの療法で治療を行い、順調に症状が改善されています。腸内フローラのバランスが崩れると、高血圧や糖尿病、肥満などを誘発するとも言われています。「糞便移植療法」で腸内細菌のバランスを整えることができれば、さまざまな病気の治療が進むことも期待できます。今後も安全性を確認しながら研究を進め、難治性の腸炎に悩む多くの患者さんの治療に役立てていきたいと考えています。

潰瘍性大腸炎に悩む18~70歳の患者さんを対象に治療しています。関心のある患者さん、医療機関の方は、お問い合わせください。

【お問い合わせ】
消化器内科・中川電話:043-222-7171(代表)

プロフィール

消化器内科助教 中川 倫夫
1998年に宮崎医科大学卒業。2013年10月より現職。高校3年間は水球、その後も水泳やフットサルなどを続けてきたアスリート。「最近は忙しくてなかなか泳げていません」