比較的稀なものではありますが、『硬膜動静脈奇形』という病気が、痴呆をきたすことがあります。
頭部の血管の異常に『動静脈奇形(どうじょうみゃくきけい)』と呼ばれるものがあります。正常な脳血管系には、動脈と静脈の間に毛細血管があります。しかし、動静脈奇形という血管異常では、動脈と静脈との間に、本来ならあるべき毛細血管がありません。そのかわり、動脈と静脈をつなぐ、大小さまざまな異常血管(『短絡血管』と呼ばれます)が発達しています。動静脈奇形の部分では、血液がこの短絡血管を通るために、血液は脳細胞への栄養供給・老廃物の受け取りという本来の役割を果たさないまま、動脈から静脈へ素通りしてしまいます。動静脈奇形には、『ナイダス』(大小さまざまな短絡血管が集まった部分で動静脈奇形の本体部分)、『導入動脈』(ナイダスに血液を供給する動脈)、『導出静脈』(ナイダスからの大量の血液が流れ出る異常に拡張した静脈)の3つの構成要素があります。このような動静脈奇形が脳血管にできている場合を、『脳動静脈奇形』と呼び、脳を覆う硬膜の血管にできているものを『硬膜動静脈奇形』と呼びます(図5)。
硬膜動静脈奇形が、脳、とくに両側の間脳と呼ばれる脳の血液の流れを障害した場合、おもな症状として痴呆をきたすことがあります。原因となった硬膜動静脈奇形を外科的に治療することにより、痴呆を治すことができます。硬膜動静脈奇形の外科的治療には、手術による摘出術と血管内手術による塞栓術(そくせんじゅつ)があります。 |