『まずい、190だ・・・あれあれ、200まで上がってる!』
ハンドルに取り付けたメーター上の心拍数を見て、内心ちょっとあわててしまった。早朝から始まる埼玉の大会に間に合うよう、自転車を載せ薄明の中を車で出発。寝不足がたたり、どうやらPATになってしまったらしい。
こんな時は、まず休むに限る。なにしろ、時間を争うレースではなく、100〜160 km位の長距離を規定時間内にゴールすればよい「センチュリーライド」の大会なのだ。時間を競う人もときに見かけるが、なにより安全にゴールすることが最大の目標となる。自転車がさかんなヨーロッパの中でも、特にイタリアでは150-200 kmにおよぶ長距離を走る「グランフォンド」が、あちこちで開催されているとのことだ。
ちょうど道中にパンクした参加者あり、聞けば修理キットがないとのこと。パンク修理のお手伝いの名目にて、これ幸いと立ち止まった。5分もすれば心拍数も80台に落ち着きを取り戻し、再び出発することができた。
出発時にはぱらついていた雨もすでに止み、徐々に強まる日差しを浴びながら、ゴールを目指しひたすらペダルを踏む。乗っている自転車はTrek、ツール・ド・フランス7連覇を達成したLance Armstrongのバイクとほぼ同じスペックだ。しかし、その上に乗る人間を比べると、脚力・体脂肪率・最大酸素摂取量など、悲しいかな天地ほどの差がある。どの分野でもそうだが、“professional”は凡人たちとかけ離れた能力を発揮する。
自転車に乗り始める前にもっていた固定観念は、経験するにつれ次々に崩れ去った。まずはロードバイク乗りが着るウェアだが、およそおじさん達には全く似合わないあれだけは避けようと思っていた。ところが、長時間乗るときに必要な機能を追求するとあの格好にならざるを得ないことが、程なく分かった。次に、部屋の中で漕ぐローラー台。あんなマニアックなものには一生縁がない、と思っていたが、雨降りや冬などは結局これのお世話にならざるを得なかった。とどめはヒルクライム。長い坂を何kmも登って、苦しいだけで一体何が楽しいのか?しかし、日々の修行の成果がタイム短縮という形で明瞭に表れる、そんなことに気がついたのもつい最近のことだ。
生活習慣病やメタボリックシンドロームがよく話題になる昨今だが、自転車に長距離乗る習慣こそそれらを根本的に解決する有力な方法の一つ、と半ば本気で考えている。ドイツには、「トラック一杯の薬より、1台の自転車の方が健康のためになる」というようなことわざまであるらしい。わが国では脳外科医が診療に関わることの多い脳梗塞の一次予防として、まずロードバイクを処方したら?などということを思ったりもする。長距離走行には、マウンテンバイクよりもドロップハンドルのスポーツ車、いわゆるロードバイクがお勧めだ。お好みのデザインや色の一台を自由に選び、まずは走り出してもらえれば、次第に効能も明らかとなってくる。
自転車に乗れば、ちょっと想像し難い距離を1日で走破することができる。楽しく有酸素運動を長時間するにはうってつけの道具といえる。自転車走行に向かない未整備の道路、自転車に対する理解のない車など、安全に走る上で無視できない問題も少なくないが、それを考慮に入れても余りある魅力を自転車は持っていると思う。
・・・などと考えつつ数時間汗をかいた後、ようやく目指すゴールにたどり着いた。今回はPATで冷や汗をかいたが、センチュリーライドに出るたびに何か今までにない体験をする。これからも、自転車に乗って健康作りをめざしていくことにしよう。歳を考え無理はせず、あくまでat my own riskで・・・ |